商標権侵害とは?成立要件、とるべき法的措置を解説
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1. 商標権侵害とは
商標権侵害による被害を放置していると、自社のブランドイメージが毀損されてしまうおそれがあります。商標権侵害を発見したら、迅速な対応をとることが大切です。
(1)商標権とは
「商標権」とは、事業上使用する商標について、独占的かつ排他的な使用を認める権利をいいます。
「商標」とは、以下の①~③の要件をすべて満たすものをいいます(商標法2条1号)。商品名・マーク・ロゴなどが商標の代表例です。
①人の知覚によって認識できるものであること
②以下のいずれかに該当すること
- 文字
- 図形
- 記号
- 立体的形状
- 色彩
- 上記の各要素の結合
- 音
③以下のいずれかに該当すること
業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者が、その商品について使用をするもの
業として役務を提供し、または証明する者が、その役務について使用をするもの
商標について特許庁の登録(=商標登録)を受けると、商標権が発生します。
商標権者は、登録商標を独占的に使用できます(=専用権)。
また、商標権者以外の者は、商標権者の許諾を得ることなく、登録商標や類似の商標を使用することができなくなります(=禁止権)。
(2)商標権侵害の要件
商標権侵害が成立するのは、商標権者の専用権または禁止権を侵害した場合です。
具体的には、商標権者の許諾を得ずに以下の行為をすると、商標権侵害が成立します(商標法25条、37条1号)。
①指定商品または指定役務に係る、登録商標の使用
(例)第20類(家具・プラスチック製品)について「Xベッド」という登録商標を有しているところ、他社が販売するベッドに「Xベッド」という名称が付されていた。
②指定商品または指定役務に係る、登録商標に類似した商標の使用
(例)第20類について「Xベッド」という登録商標を有しているところ、他社が販売するベッドに「ニューXベッド」という名称が付されていた。
③指定商品または指定役務に類似した商品または役務に係る、登録商標の使用
(例)第20類について「Xベッド」という登録商標を有しているところ、他社が販売するソファに「Xベッド」という名称が付されていた。
④指定商品または指定役務に類似した商品または役務に係る、登録商標に類似した商標の使用
(例)第20類について「Xベッド」という登録商標を有しているところ、他社が販売するソファに「ニューXベッド」という名称が付されていた。
また、商標権者の専用権または禁止権を直接侵害していなくても、侵害につながり得る準備行為(譲渡・引渡し・輸出目的所持など)をした場合は商標権侵害とみなされることがあります(商標法37条2号~8号)。
ただし、需要者に対して商標権者の商品・サービスであると認識させる目的がない場合(=商標的使用に当たらない場合)は、商標権侵害が成立しません(商標法26条1項)。
(3)商標権侵害によるトラブルの具体例
インターネット上では、特に偽ブランド品に関する以下のような商標権侵害行為が横行しています。
(例)
- インターネット上で取引を行い、偽ブランド品を海外から輸入する。
- インターネットを通じて偽ブランド品を販売する(偽物であることを知らないで販売した場合や、レプリカであることを明示して販売した場合も同様)。
- 偽ブランド品の販売を行っている者が、インターネット上でその偽ブランド品の広告をする。
(4)他社に商標権を侵害された場合のリスク
他社による商標権侵害行為を放置していると、一般消費者が自社商品と勘違いして、他社商品を購入してしまうケースが出てくるでしょう。
その結果、売上のシェアを奪われたり、粗悪品を買ってしまった一般消費者が自社に対してマイナスイメージを抱いたりするおそれがあります。
他社による商標権侵害を発見したら、迅速に対処することが大切です。
2. 商標権侵害を受けた場合の法的手段
自社の商標権を侵害されたら、民事上の法的手段や刑事告訴によって対抗しましょう。
(1)民事上の法的手段の種類|差止請求・損害賠償請求・信用回復措置請求
商標権侵害に対する民事上の法的手段としては、差止請求・損害賠償請求・信用回復措置請求などが挙げられます。
①差止請求(商標法36条1項)
侵害行為の停止または予防、その他の侵害の予防に必要な行為(物の廃棄や設備の除却など)を請求できます。迅速に差止めを請求するためには、裁判所に差止仮処分を申し立てるのが効果的です。
②損害賠償請求(民法709条)
不法行為に基づき、侵害行為によって被った損害の賠償を請求できます。
侵害者に故意または過失があることが要件ですが、過失の存在は推定されます(商標法39条、特許法103条)。また、損害額の推定規定が設けられています(商標法38条)。
なお、侵害者が利益を得た場合には不当利得返還請求も可能です(民法703条、704条)。
不当利得返還請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権は、請求権競合(=いずれも請求可能だが、二重取りはできない)の関係にあります。
③信用回復措置請求(商標法39条、特許法106条)
故意または過失による侵害行為により、業務上の信用を害された場合には、謝罪広告などの信用回復措置を請求できます。
(2)民事上の法的手段をとる際の手順
商標権侵害に対して民事上の法的手段をとるためには、まず侵害者を特定する必要があります。
侵害者が匿名である場合は、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行いましょう。サイト管理者やインターネット接続業者などから、侵害者の情報を得られる可能性があります。
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侵害行為の証拠を保全することも大切です。商標権侵害に当たる広告のスクリーンショットを保存する、実際に販売されている侵害商品の現物を確保するなどの対応を行いましょう。
さらに、侵害者に対して内容証明郵便を送付して、侵害行為の停止や損害賠償を請求しましょう。内容証明郵便の送付には、侵害者に対して心理的なプレッシャーを与えるとともに、損害賠償請求権の消滅時効の完成を猶予する効果があります(民法150条1項)。
加えて、裁判所に対して商標権侵害行為の差止めを命ずる仮処分を申し立てましょう(民事保全法23条2項)。
保全すべき権利を有すること、および保全の必要性を疎明すれば、裁判所が侵害者に対して差止仮処分命令を発します(同法13条)。
仮処分命令は、訴訟の判決を待たず迅速に発せられるので、一刻も早く差し止める必要がある商標権侵害に対しては特に効果的です。
(3)犯人の処罰を求める刑事告訴も可能
商標権を侵害した者は「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」、商標権侵害とみなされる行為をした者は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に処されます。いずれも併科が認められています(商標法78条、78条の2)。
自社の商標権を侵害した者の処罰を求めるには、警察署に告訴状を提出して刑事告訴を行いましょう(刑事訴訟法230条)。
警察や検察による捜査が促され、犯人の摘発につながる可能性があります。
3. 商標権が侵害されたら弁護士に相談を
自社の商標権が侵害されていると思われる場合は、速やかに弁護士へ相談しましょう。
インターネットに強い弁護士に相談すれば、商標権侵害の成否を適切に判断してもらえるほか、その後の具体的な対応(発信者情報開示請求・証拠保全・民事上の法的手段など)も一任できます。
特に侵害者との示談交渉や訴訟については、弁護士に依頼することで、戸惑うことなく適切に対応できるようになるので安心です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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