不当解雇の慰謝料(損害賠償)を請求したい|相場や認められる条件
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会社に不当解雇されたときは、慰謝料を請求できることがあります。弁護士のアドバイスを受けながら、不当解雇に関するトラブルの解決を目指しましょう。
1. 不当解雇の慰謝料相場とその他に請求できるもの
不当解雇は労働者の地位を不当に奪う違法行為であり、労働者に対する不法行為を構成します。したがって、不当解雇によって労働者が被った精神的苦痛については、会社に対して不法行為に基づく損害賠償を請求可能です。
ただし、不当解雇の慰謝料は常に認められるわけではありません(後述)。仮に慰謝料が認められたとしても、その金額は多くの場合、50万円から100万円程度にとどまります。不当解雇による損害は、労働者としての地位の回復や、解雇期間中の賃金の支払いによっておもにカバーされるためです。
不当解雇は解雇の撤回や無効を主張し、復職を求めて争うのが本筋です。慰謝料請求はメインではなく、あくまでも副次的な請求であると理解しておきましょう。
なお不当解雇については、慰謝料のほかにも、解雇予告手当、未払い残業代、解雇期間中の賃金などを会社に対して請求できることがあります。
①解雇予告手当
解雇予告が行われなかった場合、または解雇予告から30日未満で解雇された場合に請求できます。
②未払い残業代
解雇前に行った残業について、残業代が正しく支払われていない場合に請求できます。
③解雇期間中の賃金
解雇によって賃金の支払いが停止した後の期間に対応する金額を請求可能です。
2. 不当解雇に関する慰謝料請求が認められるケース
不当解雇について慰謝料が認められるのは、会社側によって非常に悪質な行為がなされたケースに限られます。
(1)賃金の補填だけでは償えない精神的苦痛が生じた場合に限られる
裁判実務上、労働者が不当解雇によって受けた精神的苦痛は、原則として解雇期間中の賃金、いわゆる「バックペイ」が支払われることによって回復すると解されています。したがって、解雇期間中の賃金とは別途の慰謝料は認められないのが原則です。
ただし例外的に、解雇期間中の賃金の支払いによってもなお償えない特段の精神的苦痛が生じた場合には、慰謝料請求が認められる余地があります(東京地裁平成15年7月7日判決等参照)。
(2)不当解雇に関して慰謝料が認められた裁判例
たとえば以下の裁判例では、解雇の慰謝料が認める判断がなされています。
①札幌地裁平成15年5月14日判決
懲戒解雇の経緯に関する虚偽の事実を記載した貼り紙を、会社側が事業所の入り口に誰でも見られる状態で掲載した事案です。裁判所は会社に対し、50万円の慰謝料の支払いを命じました。
②名古屋地裁平成16年7月30日判決
労働者が、他の労働者から継続的に暴行や暴言を受けた後に解雇された事案です。裁判所は会社に対し、100万円の慰謝料の支払いを命じました。
③東京地裁平成14年7月9日判決
会社が労働者に対し、仕事を取り上げるなどの嫌がらせを行った後に解雇した事案です。労働者はうつ病などの精神疾患を発症しました。裁判所は会社に対し、150万円の慰謝料の支払いを命じました。
3. 不当解雇の慰謝料を請求する手順
不当解雇の慰謝料請求は、以下の手順で行います。
- 内容証明郵便で会社に請求書を送付する
- 会社と交渉する
- 労働審判や訴訟を通じて争う
(1)内容証明郵便で会社に請求書を送付する
まずは、会社に対して内容証明郵便で慰謝料の請求書を送りましょう。内容証明郵便を用いることで、不当解雇について本気で争う姿勢を会社に伝えることができます。
内容証明郵便には、解雇が不当であることを理由とともに記載し、さらに解雇が無効である旨および復職を認めるべき旨を記載しましょう。慰謝料請求はあくまでも、解雇無効の主張と並行して行うのがポイントです。
(2)会社と交渉する
内容証明郵便に対して会社から返答があったときは、会社との交渉に移ります。
慰謝料を請求するとしても、あくまでも解雇の撤回および復職を基本線として交渉しましょう。その上で、会社の提示する条件が労働者にとって有利と思われる場合は、退職に同意することも選択肢のひとつです。
(3)労働審判や訴訟を通じて争う
会社が解雇の撤回や慰謝料の支払いに応じない場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて争いましょう。
労働審判や訴訟では、解雇の不当性を証拠に基づいて説得的に訴えることが重要になります。弁護士を代理人として、十分な準備を整えたうえで手続きに臨みましょう。
4. 不当解雇の慰謝料請求について知っておくべきポイント
不当解雇について慰謝料請求を行う際には、以下のポイントに留意して準備を進めましょう。
- 慰謝料請求に役立つ重要な証拠の例
- 慰謝料請求権の時効に注意
- 具体的な事実の主張を行うべき
(1)慰謝料請求に役立つ重要な証拠の例
慰謝料請求を成功させるためには、解雇期間中の賃金の支払いによってもなお償えない特段の精神的苦痛が生じたことを、証拠に基づいて立証する必要があります。
特に、会社側が行った嫌がらせの言動の録音・録画・メールなどのデータがあれば、慰謝料請求が認められやすくなります。実際の慰謝料請求に先立ち、できる限り豊富に証拠を集めましょう。
(2)慰謝料請求権の時効に注意
不法行為に基づく損害賠償請求権(慰謝料請求権)は、損害および加害者を知った時から3年で時効により消滅します(民法第724条)。会社の安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を根拠として損害賠償を請求することも考えられますが、その場合も行使できるときから5年が経過すると、慰謝料請求権が時効消滅してしまいます(民法第166条第1項)。
内容証明郵便の送付、労働審判の申し立て、訴訟の提起などによって時効の完成を阻止できますので、早めに弁護士へ相談しましょう。
(3)具体的な事実の主張を行うべき
慰謝料請求に当たっては、証拠に基づいて具体的な事実を主張し、解雇の不当性を説得的に訴えることが大切です。
会社が行った不当・悪質な言動の内容や、その言動が行われるに至った経緯などについて、証拠に基づき丁寧な立証を行いましょう。
また、不当解雇をされた証拠の他に、会社側の不当解雇に強い違法性があることを根拠づける証拠も必要になります。
どのような証拠が必要になるかについては、事案によって異なってきますので、不当解雇により慰謝料を請求しようと考えている方は、専門家である弁護士への相談をおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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