交通事故の示談交渉、被害者が知っておくべき基礎知識

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
交通事故の示談交渉、被害者が知っておくべき基礎知識

交通事故の被害者が受け取れる損害賠償金の額は、示談交渉の結果によって大きく変化します。弁護士のサポートを受けながら、示談交渉を通じて適正額の損害賠償を請求しましょう。

1. 交通事故における示談とは

交通事故の被害者が損害賠償を受けるためには、まず加害者側との間で示談交渉を行うのが一般的です。

(1)交通事故における示談の概要

「示談」とは、交通事故の当事者間において、損害賠償の内容などを合意することをいいます。示談が成立すると、被害者は加害者側から、示談書の内容に従った損害賠償を受けることができます。

示談の内容を決めるために、交通事故の当事者同士が話し合うことを「示談交渉」といいます。示談交渉は原則として当事者が行いますが、加害者側が任意保険に加入している場合は任意保険会社が担当します。また、弁護士に代理で示談交渉をしてもらうことも可能です。

示談交渉にかかる期間はケース・バイ・ケースですが、2か月から3か月程度を要することが多いです。

(2)示談のメリット・デメリット

交通事故の示談が成立すれば、被害者は加害者側から早期に損害賠償を受けることができます。訴訟などに比べて手間やコストが少なく済む点も、示談の大きなメリットです。

その一方で、示談はあくまでも当事者同士の話し合いであるため、第三者機関(裁判所など)の客観的な判断を受けることができません。相手方が不合理な主張をしていても、適切に反論できずに不利な条件を受け入れてしまうケースが散見されます。

示談交渉を適切に進め、適正額の損害賠償を受けるためには、法的知見を有する弁護士のサポートが欠かせません。

2. 交通事故の示談交渉で決めること

交通事故の示談交渉では、被害者に生じた損害の内訳と当事者間の過失割合を前提に、損害賠償(示談金)の額や支払方法などを合意します。

(1)損害の内訳

交通事故の被害者は、加害者側に対して以下のような項目の損害賠償を請求できます。

(例)

<人身損害>

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 装具、器具等の購入費
  • 付添費用
  • 入院雑費
  • 介護費用
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料
  • 逸失利益
  • 葬儀費用

など

<物的損害>

  • 修理費(または買替費用)
  • 代車費用
  • 評価損
  • 休車損害
  • 動物の治療費

など

示談金の額は、被害者に生じた損害の総額を基準に決めるのが原則です。したがって、まずは上記のような損害の項目をリストアップし、その内訳を話し合って取り決めます。

(2)過失割合

被害者に生じた損害のうち、加害者側が賠償責任を負うのは、加害者側の過失割合に相当する部分に限られます(民法第722条第2項)。したがって示談交渉では、過失割合についても決める必要があります。

過失割合は、交通事故の客観的な状況に応じて決まります。当事者間に認識の相違がある場合は、話し合いを通じて譲歩しつつ合意を目指します。

交通事故の過失割合とは? 決め方と相手方との交渉等のポイント

(3)損害賠償(示談金)の額・支払方法

損害の内訳を集計した総額と、当事者間の過失割合を踏まえて、損害賠償(示談金)の額を決定します。

また、損害賠償の支払方法についても具体的に定めます。保険会社が支払う場合は一括払いとなりますが、加害者本人が支払う場合は、経済状況などを考慮して分割払いとするケースもあります。

交通事故の損害賠償|請求できる項目・算定基準・金額相場

3. 交通事故の示談交渉を有利に進めるために

交通事故の示談交渉を有利に進めるためには、交通事故の状況に関する証拠を保全すること、医師の指示に従って治療を続けること、および弁護士に相談することが大切です。

(1)交通事故の状況に関する証拠を保全する

交通事故の示談金額を左右するのは、被害者に生じた損害や、過失割合の基礎となる交通事故の状況に関する客観的な証拠を十分に確保できるかどうかです。

有力な証拠がそろっていれば、訴訟を通じて損害賠償が認められやすくなるので、その前段階の示談交渉も有利に進めることができます。

損害については、けがの治療に要した費用の領収書などを確実に保存しましょう。

交通事故の状況に関しては、警察官が作成する実況見分調書や、ドライブレコーダーの映像などが役立ちます。目撃者がいれば、証言をお願いしてみましょう。

(2)医師の指示に従って治療を続ける

交通事故によってけがをしたら、すぐに医療機関を受診した上で、医師の指示に従って治療を続けることが大切です。

医師の指示を無視して、自分の判断で勝手に通院をやめてしまうと、けがによる損害と交通事故の間の因果関係を証明しにくくなってしまいます。医師から完治または症状固定の診断を受けるまで、必ず通院を続けましょう。

(3)弁護士に相談する

弁護士に示談交渉を代行してもらえば、法的根拠に基づいて適正な損害賠償を請求してもらえます。

特に、被害者に生じた損害を漏れなく請求できる点や、過去の裁判例に基づく基準(=弁護士基準)によって適正な損害額を計算できる点は、弁護士に依頼することの大きなメリットです。交通事故の損害賠償請求は、弁護士に相談しましょう。

4. 交通事故の示談交渉に関する注意点

交通事故の示談交渉へ臨むにあたり、被害者が知っておくべき注意点を解説します。

(1)損害賠償を増額するなら、物損事故よりも人身事故

交通事故の損害賠償額は、被害者にけががない「物損事故」よりも、被害者がけがをした「人身事故」の方が高額となる傾向にあります。

また、警察官に人身事故として届け出れば、交通事故の客観的な状況を実況見分調書に記録してもらうことができます。

損害賠償の増額を目指すなら、たとえ軽症であっても、警察官に人身事故として報告しましょう。

(2)示談成立後の追加請求は難しい|漏れのない請求を

一度示談書にサインすると、示談書に書いていない内容の追加請求をすることは困難です。

示談書にサインする前に、交通事故による損害に集計漏れがないか、過失割合は適切かなどをきちんと検討しましょう。

(3)損害賠償請求権の消滅時効に要注意

交通事故の損害賠償請求権は、以下の期間が経過すると時効により消滅してしまいます(民法第724条、第724条の2)。

被害者がけがをした場合(人身事故) 以下のいずれかの期間
  • 損害および加害者を知った時から5年
  • 交通事故の時から20年
被害者がけがをしなかった場合(物損事故) 以下のいずれかの期間
  • 損害および加害者を知った時から3年
  • 交通事故の時から20年

被害者が損害賠償を受けるには、上記の期間が経過する前に、内容証明郵便による請求や訴訟の提起などを行うことが必要です。できるだけ早く弁護士に相談して、準備が整ったら速やかに損害賠償請求を行いましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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