交通事故の過失割合とは? 決め方と相手方との交渉等のポイント

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
交通事故の過失割合とは? 決め方と相手方との交渉等のポイント

過失割合とは、交通事故に関する当事者双方の過失を数値化したものになります。被害者側にも落ち度がある場合には、過失相殺により賠償額が減額されてしまいます。そのため、適正な賠償額を獲得するためには、適切な過失割合を主張していくことが大切です。
過失割合は、事故態様や状況に応じて類型化されていますので、過失割合の決め方のルールなどを押さえておくようにしましょう。

1.交通事故での過失割合とは?

交通事故の過失割合とはどのようなものなのでしょうか。以下では、交通事故の過失割合の基本について説明します。

(1)交通事故で過失割合が持つ意味

過失割合とは、交通事故に関する当事者の責任(過失)を数値化したものになります。
交通事故で被害者にも落ち度がある場合、公平の見地から被害者の過失分が賠償額から控除されます。このような制度を「過失相殺」といいます(民法722条2項)。
たとえば、交通事故で100万円の損害が発生したとしても、加害者と被害者の過失割合が90:10だった場合、過失相殺により被害者に支払われる賠償金は90万円になります。

(2)過失割合はどのように決まる?

過失割合は、基本的には加害者側の保険会社と被害者側の保険会社が話し合って決めます。その際には、過去の裁判例で示された過失割合(「別冊判例タイムズ38号」「交通事故損害額算定基準(赤い本)」など)を基本に、個別の修正要素(事故発生時の状況、当事者の属性・行動等により「+10%」「-10%」などの修正を行う)を考慮して具体的な過失割合を判断しています。
加害者側の弁護士は、被害者の過失割合を多く主張することがありますので、不利な過失割合を押し付けられないようにするためにも、被害者側も弁護士に相談して過失割合を確認してもらうようにしましょう。
なお、過失割合の詳しい決め方については2章で説明します。

2.事故のパターンごとの基本の過失割合

過失割合は、事故のパターンごとに基本の過失割合が決まっています。以下、説明します。

(1)歩行者vs.自動車・バイクの事故

歩行者と自動車・バイクの事故は、歩行者保護の観点から、自動車・バイク側に重い過失が認められる傾向があります。

①歩行者:自動車・バイク=0:100のケース

  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が青信号で横断を開始し、自動車・バイクが赤信号で直進侵入し、衝突したケース
  • 歩道を通行する歩行者と車道から道路外または道路外から車道に行くために歩道を横断する自動車・バイクが衝突したケース

②歩行者:自動車・バイク=10:90のケース

  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が黄信号で横断を開始し、自動車・バイクが赤信号で直進侵入し、衝突したケース
  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が青信号で横断を開始し、自動車・バイクが青信号で右左折のために交差点に進入し、衝突したケース

③歩行者:自動車・バイク=20:80のケース

  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が赤信号で横断を開始し、自動車・バイクが赤信号で直進侵入し、衝突したケース
  • 横断歩道や交差点以外の場所を横断する歩行者と直進する自動車・バイクとが衝突したケース

(2)歩行者vs.自転車の事故

自転車は軽車両として扱われますので、自転車側に多くの過失が認められる傾向があります。

①歩行者:自転車=0:100のケース

  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が青信号で横断を開始し、自転車が赤信号で直進侵入し、衝突したケース
  • 横断歩道により道路を横断する歩行者と自転車とが衝突したケース
  • 路側帯を通行する歩行者と自転車とが衝突したケース

②歩行者:自転車=10:90のケース

  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が青信号で横断を開始し、自転車が青信号で右左折のために交差点に進入し、衝突したケース
  • 道路の端以外の場所を通行している歩行者と自転車とが衝突したケース

③歩行者:自転車=20:80のケース

  • 信号機の設置されている横断歩道において、歩行者が青信号で横断を開始してその後赤信号になった場合で、自転車が青信号で直進進入し、衝突したケース
  • 横断歩道や交差点以外の場所を横断する歩行者と直進する自転車とが衝突したケース

(3)自動車vs.自動車の事故

自動車同士の事故では、歩行者や自転車のような修正はありませんので、事故態様に応じて基本の過失割合を決定します。

①自動車(A):自動車(B)=0:100のケース

  • Aが信号待ちのために停車中に後ろからBに追突されたケース
  • Aが直進走行中に対向車線においてセンターラインを越えたBと衝突したケース

②自動車(A):自動車(B)=10:90のケース

  • 交差点において優先道路を直進するAと非優先道路を直進するBとが衝突したケース
  • 直進するAと道路外に出るために対向車線から右折するBとが衝突したケース

③自動車(A):自動車(B)=20:80のケース

  • 交差点において黄信号で直進するAと赤信号で交差道路を直進するBとが衝突したケース
  • 信号機のない交差点において、直進するAと対向車線を右折するBとが衝突したケース

(4)バイクvs.自動車の事故

バイクは、自動車よりも車体が小さく、事故が起きた場合にバランスを崩して被害が大きくなりやすいため、自動車よりも過失割合が小さくなっています。

①バイク:自動車=0:100のケース

  • 信号機のある交差点において、青信号で直進進行するバイクと交差道路を赤信号で直進進行する自動車とが衝突したケース
  • バイクが直進走行中に対向車線でセンターラインを越えた自動車と衝突したケース

②バイク:自動車=10:90のケース

  • 信号機のある交差点において、黄信号で直進進行するバイクと交差道路を赤信号で直進進行する自動車とが衝突したケース
  • 信号機のない交差点において優先道路を直進するバイクと非優先道路を直進する自動車とが衝突したケース

③バイク:自動車=20:80のケース

  • 信号機のない交差点において公路を直進するバイクと狭路を直進する自動車とが衝突したケース
  • 自動車が進路変更をしたところ、同一道路を後方から直進するバイクと衝突したケース

(5)自転車vs.自動車・バイクの事故

自転車は、バイクよりも有利に過失割合が修正されますが、歩行者と同視する程度までには修正はされません。

①自転車:自動車・バイク=0:100のケース

  • 信号機のある交差点において、青信号で直進進行する自転車と交差道路を赤信号で直進進行する自動車・バイクとが衝突したケース
  • 自転車が直進走行中に対向車線を直進中の自動車・バイクがセンターラインを越え、衝突したケース

②自転車:自動車・バイク=10:90のケース

  • 交差点において黄信号で直進する自転車と赤信号で交差道路を直進する自動車・バイクとが衝突したケース
  • 自動車・バイクが進路変更をしたところ、同一道路を後方から直進する自転車と衝突したケース

③自転車:自動車・バイク=20:80のケース

  • 信号機のない交差点において、同幅員の道路を直進する自転車と交差道路を直進する自動車・バイクとが衝突したケース
  • 道路の右側端を通行する自転車と対向方向から直進する自動車・バイクとが衝突したケース

(6)高速道路上の事故

①A:B=0:100のケース

  • 先行事故により高速道路上で停車中のAに後方からBが追突したケース
  • 故障などの理由で路肩の停車中のAに後方からBが追突したケース

②A:B=10:90のケース

  • 走行車線から追越車線に進路変更するB(自動車)の後方から直進するA(バイク)が衝突したケース

③A:B=20:80のケース

  • 高速道路を走行中のAと高速道路の本線車道を歩行中の歩行者とが衝突したケース
  • 走行車線から追越車線に進路変更するB(自動車)の後方から直進するA(自動車)が衝突したケース

(7)駐車場内の事故

①自動車同士の事故

通路を進行する自動車(A)と通路から駐車区画への進入を開始した自動車(B)が衝突した場合の過失割合は、A:B=80:20となります。
また、駐車場内の通路の交差部分に侵入した自動車同士が出合い頭で衝突した場合の過失割合は、50:50となります。

②歩行者と自動車の事故

駐車区画内や通路上で歩行者と自動車が衝突した場合の過失割合は、以下のとおりです。
歩行者:自動車=10:90

3.過失割合の修正要素とは

交通事故の過失割合は、上記の過失割合を基本に、個別の修正要素を考慮して具体的な過失割合を判断しています。以下では、過失割合の修正要素について説明します。

(1)事故が発生した時間

事故が発生した時間が日没時から日出時までの「夜間」だった場合、自動車のライトにより自動車が来ていることを容易に認識することができますので、過失割合の修正要素になります。

(2)事故の発生場所

①幹線道路

幹線道路とは、歩車道の区別があり車道幅員がおおむね14m以上で、車両が校則で走行し、通行量の多い国道などをいいます。

②歩車道の区別がない道路

歩車道の区別がない道路とは、歩道または歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯と車道との区別がない道路をいいます。

③左右の見通しがきかない交差点

交差点進入直前に遮蔽(しゃへい)物などで車両が申告している道路と左右に交差する道路の見通しがきかない交差点をいいます。

④住宅街や商店街

住宅街や商店街とは、人の横断・通行が激しい、または頻繁に予測される場所をいいます。

(3)被害者の属性

過失割合は、以下の被害者の属性によっても修正がなされます。

  • 幼児……6歳未満の人
  • 児童……6歳以上13歳未満の人
  • 高齢者……おおむね65歳以上の人
  • 身体障がい者……車いす利用者、聴覚障がい者、視覚障がい者など

(4)過失の態様

通常の過失を超える著しい過失や重過失があった場合には、基本の過失割合が修正されます。

①著しい過失

  • わき見運転など著しい前方不注意
  • 著しいハンドル・ブレーキ操作不適切
  • 携帯電話を使用しながらの運転
  • 酒気帯び運転
  • おおむね時速15Km以上30km未満の速度違反

②重過失

  • 酒酔い運転
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • おおむね時速30km以上の速度違反
  • 過労、病気、薬物などの影響で正常な運転ができないおそれがある場合

4.過失割合に納得がいかない場合は?

示談交渉で過失割合に納得がいかない場合は、以下の対処法を検討しましょう。

(1)法的手続き

①ADR(交通事故紛争処理センター)

交通事故紛争処理センターでは、和解あっせんにより交通事故のトラブルを解決に導いてもらうことができます。交通事故紛争処理センターの和解あっせんは、費用がかからず迅速な対応が期待できる反面、執行力がないため終局的な解決は期待できません。

②調停

簡易裁判所の民事調停は、民事上のトラブルを当事者同士の話し合いにより解決を図る手続きです。調停では、調停委員が当事者の間に入ってくれますので、当事者だけの話し合いよりもスムーズな解決が期待できます。
当事者が合意に至れば調停成立となり、合意内容が調停調書にまとめられます。調停調書には執行力がありますので、賠償金の不払いなどがあれば強制執行が可能です。

③訴訟

ADRや調停は、合意による解決方法ですので、当事者間の争いが激しい事案では合意に至らないこともあります。そのような場合には最終的に訴訟により解決を図ることになります。
訴訟では、当事者双方の主張立証を踏まえて、裁判官が判決により結論を出します。確定判決には、執行力がありますので、賠償金の不払いがあれば強制執行が可能です。

(2)有力な証拠を揃えるには

事故に有利な過失割合を認定してもらうためには、証拠により事故状況を立証していかなければなりません。過失割合の立証に役に立つ証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 事故直後の写真(現場、車両などの状況)
  • 目撃者の証言
  • 実況見分調書

どのような証拠が必要になるかは、具体的な状況によって異なりますので、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

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5.過失割合が「100:0」の場合は保険会社に示談交渉を依頼できない

自動車保険に加入していれば、保険会社による示談代行サービスが受けられますので、過失割合の交渉も保険会社に任せることができます。
ただし、過失割合が「100:0」と主張する場合には、自分の保険会社に相手方への保険金支払い義務が生じないため、保険会社の示談代行サービスを利用することはできません。そのため、このようなケースでは被害者自身で示談交渉を行わなければなりません。
もっとも、知識や経験が乏しい被害者自身による示談交渉では、不利な条件で示談に応じてしまうリスクがありますので、相手との折り合いがつかないときは、弁護士に相談するようにしましょう。

6.過失割合の交渉をスムーズに進めるなら弁護士に相談を

過失割合の交渉をスムーズに進めるなら弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談をすれば、証拠集め、相手方との交渉、訴訟対応などについてアドバイスやサポートをしてもらえますので、自己に有利な過失割合が認定できる可能性が高くなります。
被害者自身で交渉をするのは精神的にも大きな負担となりますので、専門家である弁護士に任せるのが安心といえるでしょう。

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