悪質な口コミを削除したい|削除依頼方法や削除できない場合の対処法を解説
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Googleマップ、食べログ、Amazonレビューなどで悪質な口コミが掲載されてしまうと、商品やサービスを提供する企業の評価にも直結するため、大きな損失を被るおそれがあります。このような悪質な口コミやレビューを発見したときは、そのまま放置するのではなくすぐに削除などの対応をとる必要があります。
本コラムでは、企業側が悪質な口コミやレビューなどを削除したい場合の削除請求について解説します。
1. 悪質な口コミ…違法性の判断ポイントとは?
企業側にとって不都合な口コミやレビューがあったとしても、そのすべてが削除の対象になるわけではありません。以下では、悪質な口コミやレビューがあった場合における違法性判断のポイントについて説明します。
(1)悪質な口コミが違法になる3つのケース
口コミやレビューが実際に削除の対象になるかどうかは、権利侵害を伴う違法な内容であるかどうかがポイントになります。悪質な口コミが違法になるおもなケースとしては、以下の3つが挙げられます。
①名誉毀損罪:事実と異なる情報を掲載し、社会的な評価を低下させる行為
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して、他人の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です。口コミサイトなどは不特定または多数の人が閲覧するものになりますので、そこに他人の社会的評価を低下させるおそれのある事実を書き込みと違法な口コミになる可能性があります。
②虚偽表示による風評被害:根拠のない悪評を拡散し、経済的な損害を与える行為
根拠のない悪評を拡散して、企業に対して経済的な損害を与える行為は、信用毀損罪または業務妨害罪という犯罪が成立します。
口コミサイトなどで虚偽表示による風評被害を与えたときは違法な口コミになる可能性があります。
③プライバシー侵害:個人情報や私生活を無断で公開する行為
個人情報や私生活に関する情報を勝手に公開されるとプライバシー侵害が成立します。口コミサイトなどで個人の氏名、住所、連絡先などを投稿するとプライバシーを侵害する違法な口コミになる可能性があります。
(2)判断が難しいケース
違法な口コミ・レビューであるかは、個別事情も考慮して判断しなければなりません。違法な口コミ・レビューにあたるかどうかの判断が難しいケースとしては、以下のものが挙げられます。
①論評と名誉毀損の境界線:判例を交えて解説
論評とは、証拠による証明になじまない物事の善悪、優劣、価値についての議論や批評をいいます。
刑事上の名誉毀損は、事実の摘示が要件とされていますので、事実の摘示を伴わない論評では名誉毀損罪は成立しません。
判例でも、論評について、刑事上の名誉毀損罪にはあたらないものの民事上の名誉毀損として不法行為が成立し得ると判断しています(最高裁判所平成9年9月9日判決)。
②表現の自由とのバランス:公共性・公益性の判断基準
他人の名誉を毀損するような表現であったとしても、以下の要件を満たすときは、違法性が阻却されます。
- 公共の利害に関する事実(公共性)
- その目的がもっぱら公益を図る目的であった(公益性)
- 真実であることの証明があった
そのため、悪質な口コミがあったとしても違法性阻却事由がある場合には、削除は難しいでしょう。
③店舗・企業と個人の違い:受忍限度の考え方
悪質な口コミにより名誉感情が侵害された場合、社会通念上受忍すべき限度を超えていたと評価できる場合は、不法行為が成立します。
しかし、店舗・企業と個人ではその感じ方に差がありますので、同様の口コミがあったとしても、個人の方が違法性が認められやすいといえます。
(3)削除対象になる口コミの具体的な事例
以下のような口コミは、違法な口コミであるとして削除できる可能性が高いです。
事実確認不足による誤った情報の書き込み
競合他社による意図的なネガティブキャンペーン
リベンジポルノや私的な写真の無断掲載
①事実確認不足による誤った情報の書き込み
投稿者が事実確認を怠り、誤った認識で口コミを投稿した場合、名誉を毀損する違法な口コミになりますので、削除できる可能性が高いです。
②競合他社による意図的なネガティブキャンペーン
ネガティブキャンペーンとは、ライバルをおとしめるための情報発信をいいます。競合他社による根拠のない意図的なネガティブキャンペーンは、名誉毀損などの罪に問われる違法な行為になりますので、削除できる可能性が高いです。
③リベンジポルノや私的な写真の無断掲載
リベンジポルノや私的な写真を無断で掲載することは、プライバシー権を侵害する違法な行為になりますので、そのような口コミは削除できる可能性が高いです。
2. 口コミの削除依頼の手続き方法と注意点
口コミやレビューに違法性が認められる場合には、以下のような方法で削除依頼の手続きを進めていきます。
(1)掲載先への削除依頼
悪質な口コミやレビューが書き込まれた場合、掲載先のサイトに削除依頼をすることで、口コミやレビューを削除することができます。
掲載先への削除依頼の手順は、掲載先のサイトによって異なりますので、以下で主要サイトごとの口コミ・レビュー削除の基準と手順を紹介します。
(2)各主要サイトの口コミ・レビュー削除の基準と手順
主要サイトごとの口コミ・レビュー削除の基準と手順は、以下のようになっています。
①Googleマップ
Googleマップでは、削除の基準として以下の内容を定めています。
- ハラスメント
- ヘイトスピーチ
- 不適切なコンテンツ
- 個人情報
- なりすまし
- 誤った情報
- わいせつ、冒とく的、性的なコンテンツ
- 暴力的、残虐的なコンテンツ
- 違法、危険なコンテンツ
- 宣伝や営利目的の口コミ
- 不明確、繰り返し投稿されたコンテンツ
- 関連性のないコンテンツ
これらに該当する口コミであれば、以下のような手順で削除依頼をすることができます。
【Googleビジネスプロフィールからの削除依頼】
- Googleビジネスプロフィールの管理画面にログイン
- メニュー欄にある「口コミ」を選択
- 削除の対象となる口コミを選択して、「不適切なクチコミとして報告する」をクリック
- 「口コミを報告」から口コミの問題点を選択して、削除要請
【Googleマップの検索結果から削除依頼】
- Googleマップで対象の口コミが記載されている店舗名を検索
- 対象となる店舗を選択して、「口コミ」をクリック
- 対象の口コミを選択して、「違反コンテンツを報告」をクリック
- 「口コミを報告」から口コミの問題点を選択して、削除要請
②食べログ
食べログでは、「口コミガイドライン」において、以下のような口コミを禁止しています。
- 実際に食事をしていない人の口コミ
- 衛生管理面に関する口コミ
- 店内の法律違反や規約違反に関する口コミ
- 個人への誹謗中傷や店舗への断定的批判
- お店への個人的なクレームやトラブルに関する口コミ
- 法令に反する行為や犯罪行為などに結びつく口コミ
- プライバシーの侵害に配慮のない口コミ
- 著作権等の知的財産権について配慮のない口コミ
- 対価を目的とした口コミ
このような口コミがあった場合には、以下の手順で削除依頼ができます。
【食べログ 削除依頼手順】
- 削除依頼をする口コミの右下にある「問題のある口コミを連絡する」をクリック
- お問い合わせフォームに必要な情報を入力して、削除申請
③Amazonレビュー
Amazonでは、「コミュニティガイドライン」において、以下のような禁止事項を定めています。
- プライベートな情報
- 乱暴な言葉や嫌がらせ
- ヘイトスピーチ
- 性的な内容
- 外部サイトへのリンク
- 広告、利益相反行為、販促コンテンツ
- 盗作、侵害、なりすまし
- 違法行為を助長するコンテンツ
このようなコミュニティガイドラインに違反するレビューがあった場合には、以下の手順で削除依頼をすることができます。
【Amazonレビューの削除依頼手順】
- 対象のAmazonレビュー下部にある「違反を報告」をクリック
- お問い合わせフォームに必要な情報を入力して、削除申請
(3)口コミ削除依頼の注意点
悪質な口コミやレビューの削除依頼をする際には、以下の点に注意が必要です。
①違反性があるかどうかを判断できないと削除に失敗する可能性も
各サイトでは、口コミの削除に関するルールを設けており、口コミが規約などに違反していなければ削除に応じてもらうことはできません。規約などにどう違反しているのかを自身で理解できていないと削除に失敗する可能性がありますので注意が必要です。
②自分でやる場合時間がかかってしまう
各サイトへの削除依頼は、個人でも対応することが可能です。しかし、知識や経験がない方だと削除依頼に手間取ってしまい、削除されるまでに時間がかかってしまう可能性があります。
悪質な口コミがあるとあっという間に拡散されてしまいますので、時間がかかるとそれだけ損失も大きくなるでしょう。
③依頼されてからの運営会社の対応
各サイトに削除依頼をしたとしてもすぐに削除に応じてくれるわけではありません。
各サイトでは、削除依頼の内容を踏まえて、削除すべきかどうかを審査しますので、削除までには一定の時間がかかります。また、申請者に対して結果の通知が来ないこともありますので、削除されたかどうかはご自身で確認しなければなりません。
3. 削除請求に応じてもらえない場合|法的手段を検討しよう
各サイトに削除依頼をしたものの、削除に応じてもらえない場合には法的手段を検討しましょう。
(1)削除の仮処分
仮処分とは、裁判の結果を待っていると債権者に不利益が生じる場合に、債権者の権利保全を目的として、裁判所が暫定的措置を講じる処分をいいます。
違法な口コミが書き込まれた場合には、裁判所に投稿の削除を求める仮処分の申し立てをすることで、迅速に口コミの削除について判断してもらうことができます。
(2)口コミ投稿者の特定
悪質な口コミが書き込まれたときは、口コミの削除だけでなく、投稿者に対する責任追及も検討する必要があります。しかし、口コミサイトなどは基本的には匿名での投稿であるため、発信者情報開示請求という方法により投稿者を特定する必要があります。
サイト管理者やプロバイダに対する発信者情報開示請求を行うことにより、投稿者の氏名や住所を明らかにすることができます。
(3)損害賠償請求が可能なケースも
発信者情報開示請求により投稿者が特定できたら、投稿者に対して損害賠償請求を行います。
ただし、企業にとって不都合なクチコミであったからといって常に損害賠償請求ができるわけではありません。損害賠償請求をするには、当該口コミが名誉毀損罪、信用毀損罪、偽計業務妨害罪にあたるような違法な内容である必要があります。
なお、悪質なクチコミをした投稿者に請求できる金額は、事案によって異なりますが、一般的には30~50万円程度が目安となります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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