【後遺障害】高次脳機能障害とは? 等級認定されるポイント
- (更新:2024年11月21日)
- 交通事故
交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、脳を損傷して、高次脳機能障害との診断を受けることがあります。
高次脳機能障害は、障害の存在が目に見えづらいことから後遺障害等級認定を受けるのに苦労するケースも多いです。適正な賠償金を獲得するためにも高次脳機能障害で後遺障害等級認定を受けるポイントをしっかりと押さえておきましょう。
1. 「高次脳機能障害」とは? 症状と治療期間
高次脳機能障害とはどのような症状なのでしょうか。以下では、高次脳機能障害の症状と治療期間について説明します。
(1)「高次脳機能障害」とはどんな症状?
高次脳機能障害とは、交通事故による脳外傷などで脳がダメージを受けたことにより、記憶力・注意力・言語・感情のコントロールなどがうまくできなくなる認知機能の障害をいいます。
高次脳機能障害の代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 失語障害……文字で書かれた文章が理解できない
- 記憶障害……人の名前や顔が覚えられない
- 注意障害……同時に2つのことを行えない
- 遂行機能障害……計画を立てて物事を実行することができない
- 社会的行動障害……周囲の人の気持ちを理解できない
上記の症状からは、認知症に似ているか感じる方もいるかもしれません。しかし、認知症は、認知機能の低下が徐々に進行していくのに対して、高次脳機能障害は、リハビリテーションによりある程度回復する部分があるという違いがあります。
(2)高次脳機能障害の治療法と治療期間の目安
①高次脳機能障害の治療方法
高次脳機能障害にはさまざまな症状があり、症状に合わせたリハビリテーションを行うことが治療の中心となります。適切なリハビリテーションを受けることで症状の回復が期待できますが、事故から年数が経ってからではよくなる程度に限界があるため、早期にリハビリテーションを開始することが重要です。
②治療期間の目安は約1年
高次脳機能障害の症状は、発症後1年程度はリハビリテーションにより改善が期待でき、治療期間の目安は1年程度になります。
(3)高次脳機能障害で後遺症が残ったらやるべきこと
交通事故による脳外傷により脳がダメージを受けると、以下の症状を発症することがあります。
- 失語障害
- 記憶障害
- 注意障害
- 遂行機能障害
- 社会的行動障害
高次脳機能障害の症状の中には、被害者本人では気付きにくいものもありますので、周囲の家族が注意して観察してあげることが大切です。事故前と比べて本人の性格などに変化が生じたと感じる場合、高次脳機能障害の可能性があるため、症状固定後に後遺障害等級申請を行いましょう。
高次脳機能障害で後遺障害等級認定が受けられれば、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求でき、高額な賠償金の支払いが受けられる可能性があります。
2. 高次脳機能障害で給付される金銭と相場額
高次脳機能障害で後遺障害が認定されるとどのような損害を請求できるのでしょうか。以下では、高次脳機能障害で認められうる後遺障害等級、給付される金銭とその相場について説明します。
(1)高次脳機能障害で認められうる後遺障害等級
高次脳機能障害と診断された場合、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。
等級 | 認定基準 | |
---|---|---|
別表第1※ | 1級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
別表第2※ | 3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することが可能な労務が相当な程度に制限されるもの | |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
※後遺障害等級を判断するための基準として「別表第1」と「別表第2」という表があります。これは障害の重さに応じて区分された表で、「別表第1」は特に重度の障害の場合を対象とし、「別表第2」は比較的軽い障害の場合を対象としています。
(2)高次脳機能障害で給付される金銭
高次脳機能障害により後遺障害が認定されると、以下のような損害を請求できます。
- 後遺障害逸失利益
- 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は、後遺障害等級認定の手続きで認定された等級に応じてもらえる補償が変動します。特に、高次脳機能障害では上位の等級が認定される可能性が高いため、症状に応じた適切な等級認定を受けることが重要です。
(3)高次脳機能障害での慰謝料(保険金)の相場額
交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの種類があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
どの基準を採用するかによって、慰謝料の金額は大きく変わります。
以下の表で自賠責保険基準と弁護士基準による後遺障害慰謝料額の違いをまとめましたので参考にしてみてください。
等級 | 後遺障害慰謝料の相場 | ||
---|---|---|---|
自賠責保険基準 | 弁護士基準 | ||
別表第1 | 1級1号 | 1600万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1203万円 | 2370万円 | |
別表第2 | 3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 1400万円 | |
7級4号 | 419万円 | 1000万円 | |
9級10号 | 249万円 | 690万円 | |
12級13号 | 94万円 | 290万円 | |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
3. 高次脳機能障害で後遺障害等級認定がされにくいケース
高次脳機能障害は、病状を認識することが困難な場合が多く、後遺障害等級認定を受けるのに苦労することがあります。医師から高次脳機能障害と診断されたにもかかわらず、高次脳機能障害で後遺障害認定が受けられない場合、以下の理由が考えられます。
- 書類内容が不十分である
- 必要な検査を受けていない
- 高次脳機能障害の認定基準を満たしていない
4. 高次脳機能障害で認定されるためのポイント
この章では、高次脳機能障害で後遺障害認定を受けるポイントを説明します。
(1)事件前後の生活状況を記録して報告する
高次脳機能障害の後遺障害認定手続きでは、医師による診断書だけではなく、被害者の家族などにより作成された「日常生活状況報告書」の提出が必要になります。
事故前後を比較してどのような変化が生じたかが後遺障害認定のポイントとなるので、本人の様子をよく知る家族や友人などに事件前後の生活状況をまとめてもらうとよいでしょう。
(2)専門医を受診する
医師にはそれぞれ専門分野があるため、高次脳機能障害で適正な等級認定を受けるには、高次脳機能障害を専門に取り扱っている医師に治療をお願いするのが重要なポイントです。
専門医であれば、等級認定に必要になる検査などを詳細に行ってくれるので、検査漏れや診断書の不備などにより等級認定が受けられないリスクを軽減できます。
(3)画像所見・神経心理学的検査
高次脳機能障害で後遺障害等級認定を受けるには、画像所見により脳の損傷が確認できなければなりません。また、高次脳機能障害による記憶障害、認知障害、注意機能障害、遂行機能障害などの症状を客観的に診断するには、神経心理学的検査も必要です。
高次脳機能障害では、通常の後遺障害とは異なり、特別な検査などが必要になるため、事故直後から高次脳機能障害の問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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