【後遺障害】脊髄損傷でもらえるお金と等級認定されるポイント
- (更新:2024年11月21日)
- 交通事故
脊髄は、脳幹を通じて伝達された指令や情報を身体の各部位に伝える重要な役割を担っています。交通事故により脊髄を損傷してしまうと、麻痺や知覚異常など重い後遺症が生じることになります。
交通事故による脊髄損傷は、後遺障害等級認定の対象になります。適正な後遺障害等級認定を受けるためには、正しい知識を身につけておくことが大切です。
1. 「脊髄損傷」とは? 症状と治療期間
脊髄損傷とは、どのような症状なのでしょうか。以下では、脊髄損傷の症状と治療期間を説明します。
(1)「脊髄損傷」とはどんな症状?
①そもそも脊髄とはどの部位か?
脊髄とは、脳とつながる中枢神経で太い神経の束が脊柱の中心を走っています。脊髄は、脳からの指令や情報を身体の各部員に伝える役割を担っています。そのため、脊髄が損傷すると脳からの信号がうまく伝達できず、麻痺などの重い障害が残ってしまいます。
なお、脊髄と似たものに脊柱がありますが、脊柱が骨で、脊髄が神経という違いがあります。
②脊髄損傷により生じるおもな症状
脊髄は、交通事故により脊柱に強い力が加えられることにより損傷が生じます。脊髄損傷により生じる代表的な症状には麻痺がありますが、麻痺の種類・程度によって以下のように分類されます。
- 四肢麻痺……全身が動かせない
- 対麻痺……両側の下肢が動かせない
- 片麻痺……片側の上肢・下肢が動かない
- 単麻痺……一側の上肢または下肢のみが動かせない
(2)脊髄損傷の治療法と治療期間の目安
①脊髄損傷の治療方法
脊髄損傷のおもな治療方法は、以下のとおりです。
- 固定
- 脊椎を固定する手術
- リハビリテーション
脊髄損傷が疑われる事案では、損傷した脊椎を固定して脊髄損傷の広がりを予防します。不全麻痺で脊髄圧迫が生じている場合には、圧迫除去のための手術を行います。他方、脊髄損傷により完全麻痺となると一般的に予後は期待できません。
②治療期間の目安
麻痺が部分的であり、交通事故から1週間以内に運動機能および感覚機能の回復が始まった場合には良好な回復が期待できます。
他方、6か月以内に機能が回復しない場合だと恒久的に機能が失われる可能性が高くなります。脊髄損傷発生後、最長で1年間は回復の可能性があるとされており、治療期間の目安は1年程度になります。
(3)脊髄損傷で後遺症が残ったらやるべきこと
交通事故により脊髄損傷が生じて、1週間以内に機能の回復が始まらないときは、麻痺の後遺症が生じる可能性が高くなります。症状固定後にこのような症状が残っている場合には、後遺障害等級申請の手続きを行います。
麻痺が生じると仕事や生活に多大な支障が生じてしまうため、収入減少などによる経済的な不安を解消するためにも適正な後遺障害等級認定を受けることが大切です。
2. 脊髄損傷で給付される金銭と相場額
脊髄損傷で後遺障害が認定されるとどのような損害を請求できるのでしょうか。以下では、脊髄損傷で認められうる後遺障害等級、給付される金銭とその相場について説明します。
(1)脊髄損傷で認められうる後遺障害等級
脊髄損傷と診断された場合、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。
等級 | 認定基準 | |
---|---|---|
別表第1※ | 1級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
別表第2※ | 3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することが可能な労務が相当な程度に制限されるもの | |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
※後遺障害等級を判断するための基準として「別表第1」と「別表第2」という表があります。これは障害の重さに応じて区分された表で、「別表第1」は特に重度の障害の場合を対象とし、「別表第2」は比較的軽い障害の場合を対象としています。
(2)脊髄損傷で給付される金銭
交通事故により脊髄損傷が生じた場合、以下の損害を請求できます。
- 治療費
- 通院交通費
- 入院雑費
- 付添費用
- 休業損害
- 入通院慰謝料
また、脊髄損傷で後遺障害が認定されると上記の損害に加えて、以下の損害も請求できます。
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は、認定された等級によりもらえる金額が大きく変わり、後遺障害等級1級または2級が認定されれば将来介護費用の請求も可能になります。
(3)脊髄損傷での慰謝料(保険金)の相場額
交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの種類があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
どの基準を採用するかによって、慰謝料の金額は大きく変わります。
以下では、自賠責保険基準と弁護士基準による後遺障害慰謝料額の違いをまとめているので参考にしてみてください。
等級 | 後遺障害慰謝料の相場 | ||
---|---|---|---|
自賠責保険基準 | 弁護士基準 | ||
別表第1 | 1級1号 | 1600万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1203万円 | 2370万円 | |
別表第2 | 3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 1400万円 | |
7級4号 | 419万円 | 1000万円 | |
9級10号 | 249万円 | 690万円 | |
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
3. 脊髄損傷で後遺障害等級認定がされにくいケース
脊髄損傷は、MRIによる画像所見により他覚的所見が得られる障害のため、画像所見から損傷部位が明らかになれば後遺障害等級認定が受けられます。
しかし、以下のようなケースでは、脊髄損傷で後遺障害等級認定を受けるのは難しいでしょう。
- MRIのテスラ値が低く、画像に損傷部位が映らない
- 症状が軽微であったため、脊髄損傷を見落とし、必要な検査が行われていない
- 既往症として脊髄軟化症や脊髄空洞症がある
- 搬送時に麻痺の神経学的所見が記録されていない
4. 脊髄損傷で認定されるためのポイント
脊髄損傷で後遺障害認定を受けるためのポイントは、以下のとおりです。
(1)早期に画像検査をする
脊髄損傷は、事故後すぐにMRIやCTなどの画像検査を行うことが重要なポイントになります。脊髄損傷による後遺障害は、画像所見により脊髄損傷が確認できなければ認定を受けられません。
事故後、時間が経ってから画像検査をしても、事故との因果関係を否定されてしまうため、早期に画像検査を実施するようにしましょう。
なお、MRIのテスラ値によっては不鮮明な画像しか得られないことがあるため、できる限り最新の設備が整った医療機関を選ぶようにしてください。
(2)各種神経症状テストを受ける
脊髄損傷によりどのような神経症状が生じているかということも、後遺障害等級認定にあたって重要な要素になります。そのため、脊髄損傷と診断されたときは、以下のような神経学的検査を受けるようにしてください。
- 徒手筋力テスト
- 深部腱反射
- 誘発テスト
- 病的反射
- 筋萎縮検査
(3)専門医の診断を受ける
医師によって専門分野が異なるため、脊髄損傷の疑いがあるときは脊髄損傷を専門に取り扱う医療機関や専門医の診断を受けることが大切です。初期対応を誤ると、症状の悪化を招くだけでなく、適正な後遺障害等級認定を受けられない可能性が高くなるので注意が必要です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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