【後遺障害】醜状でもらえるお金と等級認定されるポイント

  • (更新:2024年11月21日)
  • 交通事故
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
【後遺障害】醜状でもらえるお金と等級認定されるポイント

交通事故により怪我をすると、人目に付く場所に目立つ傷跡などが残ってしまうことがあります。このような傷跡は、「醜状障害」として後遺障害の対象になります。傷跡の部位、種類などによって認定される等級が異なるので、適正な後遺障害等級認定を受けるためにも、醜状障害の認定基準をしっかりと押さえておきましょう。

1. 「醜状(しゅうじょう)」とは? 症状と治療期間

醜状障害とはどのような症状なのでしょうか。以下では、醜状障害の症状と治療期間の目安について説明します。

(1)「醜状」とはどんな症状?

醜状とは、外貌や露出面(上肢・下肢)の部位に人目につく程度の傷跡が残ってしまう症状や耳・鼻の欠損、血種・色素沈着などをいいます。交通事故における「醜状」は、部位および種類によって、以下のように分類されます。

①醜状の部位

後遺障害等級の対象となる醜状は、以下の部位に分けられます。

  • 外貌……頭部から首までの日常露出する部分
  • 露出面……上腕から手先(上肢)および足背部を含む股関節から先(下肢)

②醜状の種類

後遺障害等級の対象となる醜状は、以下の種類に分けられます。

  • 瘢痕(はんこん)……怪我が治った後にできる傷跡や、やけど跡など
  • 線状痕……切り傷など線のように形が残る傷跡
  • 組織陥没(欠損)……皮膚や組織が欠損したときにできる傷跡

(2)醜状の治療法と治療期間の目安

①醜状の治療方法

醜状に対する治療方法は、おもに形成外科での治療が行われます。

たとえば、線状痕であれば真皮縫合という皮下縫合により、ケロイドについては放射線治療などによりある程度目立たなくすることが可能です。

②治療期間の目安

醜状の治療期間は、最低でも半年から1年程度を要するのが一般的です。特に、醜状に対して外科的手術を行った場合は、術後1年程度の経過観察通院を行うことになります。

(3)醜状で後遺症が残ったらやるべきこと

交通事故で醜状が残った場合、部位や種類によっては、後遺障害の対象になる可能性があります。後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるので、まずは、症状固定となるまで醜状に対する治療を続け、後遺障害等級認定を受けましょう。

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2. 醜状で給付される金銭と相場額

交通事故による醜状で後遺障害が認定されるとそのような損害を請求できるのでしょうか。以下では、醜状で認められうる後遺障害等級、給付される金銭とその相場について説明します。

(1)醜状で後遺障害が認められる要件

醜状による後遺障害は、基本的には瘢痕が大きいほど高い等級が認定され、事故による治療や手術によって生じたものも後遺障害の対象となります。また、以前は醜状障害について男女で異なる基準が設けられていましたが、平成22年6月10日以降は醜状障害の等級認定に男女差はありません。

傷跡が生じた位置ごとの醜状障害の要件を解説します。

①頭部

頭部の醜状は、以下のいずれかに該当すれば後遺障害が認定されます。

  • 鶏卵大以上の瘢痕
  • 頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損

②顔面部

顔面部の醜状は、以下のいずれかに該当すれば後遺障害が認定されます。

  • 10円硬貨大以上の瘢痕
  • 10円硬貨大以上の組織陥没
  • 長さ3センチメートル以上の線状痕

③頸部

頸部の醜状は、以下に該当すれば後遺障害が認定されます。

  • 鶏卵大以上の瘢痕

④上肢または下肢

上肢または下肢の露出面の醜状は、以下に該当すれば後遺障害が認定されます。

  • 上肢または下肢の露出面に手のひら大以上の瘢痕

(2)醜状で認められうる後遺障害等級

醜状障害と診断された場合、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。

①外貌の後遺障害等級

後遺障害等級 認定基準 詳細
7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの ・頭部に手のひら大以上の瘢痕
・頭蓋骨に手のひら大以上の欠損
・顔面部に鶏卵大以上の瘢痕
・顔面部に10円硬貨大以上の組織陥没
・頸部に手のひら大以上の瘢痕
9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの ・顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕
12級14号 外貌に醜状を残すもの ・頭部に鶏卵大以上の瘢痕
・頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損
・顔面部に10円大以上の瘢痕
・顔面部に長さ3センチメートル以上の線状痕
・頸部に鶏卵大以上の瘢痕

②露出面の後遺障害等級

後遺障害等級 認定基準
12級相当 上肢または下肢の露出面に手のひらの大きさの3倍以上の瘢痕を残すもの
14級4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの瘢痕を残すもの
14級5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの瘢痕を残すもの

(3)醜状で給付される金銭

交通事故により醜状障害が生じると、以下の損害を請求することができます。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 入院雑費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料

また、後遺障害が認定されると、上記損害に加えて、「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」を請求することも可能です。

ただし、醜状障害が残ったとしても、直ちに労働能力の低下が生じるわけではないので、後遺障害逸失利益の有無および金額が争点になるケースが多いです。裁判になっても、等級どおりの労働能力喪失率が認められているのではなく、以下の要素を総合的に考慮しながら実際の労働能力喪失率が定められています。

  • 被害者の職種
  • 被害者の年齢
  • 醜状痕の場所
  • 化粧や髪型の工夫で醜状を隠せるか
  • 醜状以外に知覚鈍麻や痛みなどの症状を伴っているか

(4)醜状での慰謝料(保険金)の相場額

交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの種類があります。

  • 自賠責保険基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

どの基準を採用するかによって、慰謝料の金額は大きく変わります。以下で自賠責保険基準と弁護士基準による後遺障害慰謝料額の違いをまとめているので参考にしてみてください。

等級 後遺障害慰謝料の金額
自賠責保険基準 弁護士基準
7級 419万円 1000万円
9級 249万円 690万円
12級 94万円 290万円
14級 32万円 110万円

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3. 醜状の後遺障害等級認定は揉めやすい?

醜状の後遺障害等級認定は、面接調査での詳細の状況確認があることや、後遺障害逸失利益の請求にあたって労働能力の喪失を否定される場合があることなど、一般的な後遺障害の等級認定に比べてもめやすいです。

特に、「眉毛や髪の毛で隠れる部分の醜状」や、「顔面神経麻痺によりまぶたが閉じられなくなった」といったケースでは、醜状の後遺障害でもめやすいため注意が必要です。

4. 醜状で認定されるためのポイント

醜状で後遺障害認定を受けるポイントは、以下のとおりです。

(1)早期に受傷部の画像撮影をする

醜状が交通事故により生じたものであることを明らかにするためにも、事故後はすぐに傷跡の撮影を行うようにしてください。

また、その後も定期的に傷跡の状態を撮影するなどして、症状固定時の醜状が交通事故により生じたものであることを立証できるよう準備しておきましょう。

(2)症状固定後は早急に認定申請する

醜状は、症状固定後も時間の経過により、徐々に傷跡が目立たなくなっていきます。醜状障害の等級は傷跡の大きさや長さによって基準が決められているので、後遺障害申請が遅れると本来得られたはずの等級よりも軽くなってしまうおそれがあります。

そのため、医師から症状固定と診断されたときはすぐに後遺障害等級申請を行うようにしてください。

(3)面接調査を受ける

一般的な後遺障害等級認定の手続きは、基本的には書面審査のみですが、醜状障害については自賠責調査事務所による面接調査が行われます。

写真や診断書からは、醜状障害の有無や程度が判別しないケースも少なくないため、必ず面接調査を受けるようにしてください。

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