車両保険の補償内容と必要性|どんな場合に役立つか?
- 交通事故
1.車両保険とは
車両保険は、交通事故で破損した自分の車の修理費用などを補償する保険です。任意保険に特約として付けることができます。
(1)車両保険の補償内容|自分の車の修理費用などが補償される
車両保険によって補償されるのは、盗難・衝突・接触・火災・爆発・台風・竜巻・洪水など、偶然な事故によって契約車両が被った損害です。
具体的には、以下のような損害が車両保険によって補償されます。ただし、補償される具体的な損害の内容は、保険商品や特約の有無などによって異なります。
- 修理費用
- 買替費用
- 代車費用
など
(2)車両保険が役立つケース
車両保険が役立つのは、主に交通事故による物損について、相手方から十分な損害賠償を受けられない場合です。
具体的には、以下のようなケースにおいて車両保険に加入していると、相手方から賠償を受けられない損害についても補償を受けることができます。
- 相手方が対物賠償保険に加入しておらず、損害賠償を支払う資力もない
- 自分が加害者の立場であり、相手方に対してほとんど損害賠償を請求できない
- 標識やガードレールに衝突するなど、自損事故を起こした
- 車に落書きなどのいたずらや当て逃げをされ、誰が加害者だか分からない
など
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(3)車両保険金額の決まり方
車両保険の保険金額(=事故が発生した際に契約者が受け取れる金額)は、契約者が自由に決められるわけではありません。保険金額は、保険契約時の車両の時価相当額に応じて設定されます。
時価相当額は、契約車両の車種・年式・型式などが同じで、消耗度が同程度の車両の市場販売価格が参照をして、保険会社が決定します。
保険会社によっては、保険会社が幅のある時価相当額を算出し、契約者がその範囲内で保険金額を決める例もあります。
年式が古く、時価相当額がゼロに等しいと思われる車両については、車両保険をかけることができないケースもあるので注意が必要です。
車両保険には、一定の免責額が設けられるケースがあります。
免責額が設定されている場合は、免責額を超える部分の損害のみが補償されます。たとえば免責額が10万円で、100万円の修理費用が発生した場合には、免責額を超える90万円のみが補償の対象です。
(4)車両保険によってカバーされる修理費用の範囲
車両保険によってカバーされる修理費用は、原則として保険金額の範囲内かつ免責額を超える部分の実費です。
ただし、契約車両が「全損」の状態である場合は、事故前の時点における契約車両の時価相当額が補償の上限となります。車を修理するよりも、同等の車を買い替えた方が安く済むためです。
「全損」には、「物理的全損」と「経済的全損」の2パターンがあります。
①物理的全損
車の損傷が激しく、修理が物理的に不可能である状態です。
②経済的全損
車の修理費用の額が、事故前の時点における車の時価相当額を上回っている状態です。
(5)車両保険の保険料の決まり方
車両保険の保険料の額は、保険金額に応じて決まります。保険金額が高ければ高いほど、保険料も高額になります。
ただし、免責額を高めに設定すれば、その分保険料を抑えることができます。
2.「2パターン」の車両保険|「一般型」と「限定型」
車両保険による補償の内容は、保険商品によって異なります。
大まかには、契約車両の損害を幅広く補償する「一般型」と、補償範囲を限定する代わりに保険料を抑えた「限定型」の2パターンを提供する保険会社が多いです。
(1)「一般型」の車両保険
「一般型」の車両保険では、以下のような事故による車両の損害が幅広く補償されます。
(例)
- 自動車同士の接触事故
- 自転車との接触事故
- 歩行者との接触事故
- 動物との接触事故
- 火災、爆発
- 盗難
- 暴力行為、破壊行為
- 台風、竜巻、洪水、高潮
- 落書き、いたずら、窓ガラス破損
- 飛来中または落下中の物との衝突
- 電柱、ガードレールなどとの衝突、接触(自損事故)
- 墜落、転覆
- 地震、噴火、津波
- その他の偶然な事故
一般型の車両保険は補償範囲が広い分、限定型よりも保険料が割高となる傾向にあります。
(2)「限定型」の車両保険
「限定型」の車両保険では、一般型に比べて補償の範囲が限定されています。
具体的な補償範囲は保険商品によって異なりますが、以下のような事故については、限定型による補償の対象から除外されていることがあります。契約締結時に保険約款の内容をよく確認しましょう。
(例)
- 飛来中または落下中の物との衝突
- 電柱、ガードレールなどとの衝突、接触(自損事故)
- 墜落、転覆
- 地震、噴火、津波
限定型の車両保険は補償範囲が限定されている分、一般型よりも保険料が割安となる傾向にあります。
3.車両保険は必要か?加入した方がよいケース
交通事故による車の損傷については、相手方に対して損害賠償を請求できるケースも多いです。
しかし、相手方が対物賠償保険に加入していない場合や、自分が加害者の立場である場合など、十分な損害賠償を受けられないケースも想定されます。このような場合に備えて、車両保険に加入しておくのが安心です。
特に以下のような場合には、念のため車両保険に加入することをおすすめします。
- 新車や高級車に乗っている場合
→修理費用や買替費用が高額になりやすいので、車両保険に加入するのが安心です。 - ローンで車を購入した場合
→車が全損してローンだけが残ってしまうと大変なので、車両保険に加入するのが安心です。 - 運転初心者が運転する場合
→自損事故を含めた損傷のリスクが高いので、車両保険に加入しておきましょう。
4.車両保険を利用すると、保険料が高くなることも
車両保険の保険金を受け取ると、その後の保険料が高くなってしまいます。交通事故によって車が壊れても、すぐに車両保険を利用するのではなく、加害者側に対する損害賠償請求を先に検討しましょう。
(1)車両保険の等級制度|保険金を受け取ると等級が下がる
車両保険の保険料には、等級制度が設けられています。交通事故発生時に保険金を請求すると、車両保険の等級が下がり、その後の保険料が高くなってしまいます。
車両保険を利用できるケースであっても、等級を下げずに保険料の上昇を防ぐためには、できる限り車両保険以外の方法で補償を受けることが望ましいです。
(2)車両保険を利用するよりも先に、加害者側に対する損害賠償請求を
交通事故による物損は、加害者側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。車両保険を利用するよりも先に、加害者側に対する損害賠償請求を検討しましょう。
損害賠償請求に当たっては、当事者間の過失割合をどのように定めるかが重要なポイントになります。自分の過失割合が過大に認められてしまうと、損害賠償額が大幅に減ってしまうので要注意です。
加害者側が不当な過失割合を提示してきたら、弁護士に相談しましょう。客観的な事故状況から適正な過失割合を導き出し、法的根拠に基づいて適正額の損害賠償を請求してもらえます。
特に、自分の過失割合がゼロだと主張したい場合は、自分が加入している任意保険の示談代行サービスを利用することができないので、弁護士への依頼が必要不可欠です。
自動車保険などに付帯されている弁護士費用特約を利用すると、自己負担ゼロまたは少額の負担で弁護士に依頼できます。
ご自身が加入している保険に加えて、家族が加入している保険の弁護士費用特約も利用できることがありますので、保険契約の内容を確認してみましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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