少年犯罪
- (更新:2024年12月23日)
- 犯罪・刑事事件
1. 少年事件とは
(1)少年事件とは
少年事件とは、20歳未満の人が犯した事件のことです。20歳以上の大人は、刑事事件として扱われ、起訴された場合には刑事裁判により有罪・無罪が判断されます。
しかし、20歳未満の人は、いまだ成長途上にあり、罪を犯したとしても適切な教育などにより更生が期待できることから、刑事事件とは扱いが異なります。少年事件は、少年法により特別な処遇が行われています。
(2)対象になる「少年(未成年)」は3種類
少年事件における「少年」とは20歳未満の人をいいます(少年法第2条1項)。一般的な用語法とは異なり、男女は関係ありません。
なお、令和4年(2022年)4月に施行された民法改正により、成年年齢が満18歳に引き下げられました。しかし、少年法上は、18歳・19歳の年齢にあたる者を「特定少年」として扱うことになりました。「特定少年」は、後述する「逆送」により大人と同様の刑事罰を科される犯罪の基準が広く設定されており、また、実名報道の規制も緩和されます。
少年事件は、少年の年齢などに応じて以下の3種類に分けられます(少年法第3条1項)。
①犯罪少年
犯罪少年とは、14歳以上20歳未満で、刑法などの刑罰法令の定めに触れる行為をした少年をいいます。犯罪少年は、原則として家庭裁判所に送致され、少年審判という手続きで処遇が決定されます。
②触法(しょくほう)少年
触法少年とは、14歳未満で、刑法などの刑罰法令の定めに触れる行為をした少年をいいます。14歳未満の人には刑事責任能力が認められていませんので、罪を犯したとしても少年審判が行われることはありません。
③虞犯(ぐはん)少年
虞犯少年とは、18歳未満の少年で、不良行為などがあり、本人の性格や環境に照らして将来罪を犯すおそれのある者をさします。不良行為とは、たとえば、保護者の監護に服しない、家庭に寄り付かない、犯罪性のある人との交際があるなどです。虞犯は犯罪ではありませんが、適切な保護を行う観点から、少年審判の対象です。
刑事処罰を受ける可能性があるか否かの大きな基準となるのは「14歳以上か、14歳未満か」です。刑法第41条にも「14歳未満の者の行為は罰しない」と明記されているので、14歳以上であれば処罰されるおそれがあり、14歳未満なら処罰されないと区別できます。
(3)最近の少年事件の傾向
「少年による凶悪犯罪が増えている」などの報道が行われていることから、少年犯罪が増えていると思う方もいるでしょう。
しかし、実際には少年事件の件数(刑法犯少年の検挙人員)は、平成16年以降、減少傾向にあり、令和3年は1万4818件で戦後最少を更新しています。令和4年の刑法犯少年の犯罪種別でみると、万引き(22.5%)が最も多く、次いで自転車盗(11.2%)、傷害(10.4%)です。
参考:「令和4年中における少年の補導及び保護の概況」(警察庁生活安全局人身安全・少年課)
(4)少年事件と成人(成年)事件の違い
少年事件と成人の刑事事件とではどのような違いがあるのでしょうか。
①目的
成人事件は、刑罰を科すことにより、罪を償い再犯を防止することを目的としています。少年事件は、少年の健全な育成のために保護処分を行い、少年の更生を目的としています。
②手続き
成人事件は、軽微な犯罪であれば微罪処分として警察段階で手続きが終了することもあり、情状により不起訴になる可能性もあります。少年事件は、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送致されますので、微罪処分や起訴猶予処分などの手続きはありません。
③裁判
成人事件は、原則として公開の法廷で裁判が行われます。少年事件は、家庭裁判所において非公開の法廷で審判が行われます。
④審判後の処分
成人事件では、有罪となった場合には、死刑、懲役、禁錮、罰金、科料の刑罰が科されます。少年事件では、刑罰ではなく、保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致の保護処分が行われます。
2. 少年事件の流れ
犯罪の嫌疑がある場合には警察により補導され、あるいは、「逃げたり証拠隠滅を図ったりする恐れがある」成人と同様に逮捕されることがあります。
少年事件での逮捕後の大まかな流れは、以下のとおりです。
(1)少年事件での逮捕後の大まかな流れ
少年事件での逮捕後の大まかな流れは、以下のとおりです。
①身柄拘束され、検察へ送致
警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内、検察官へと引き継がれて24時間以内、合計すると72時間以内の身柄拘束を受けます。
ここまでは、成人と少年の扱いに差はありません。
②勾留、または勾留に代わる観護措置
逮捕後は、勾留、または勾留に代わる観護措置を受けることになります。
まず、検察で、検察官が身柄拘束の必要があると判断した場合には、成人と同様に勾留されることがあります。
ただし、少年事件では、勾留状はやむを得ない場合にしか発布できず、勾留に代わる観護措置が行われることもあります。
裁判官が勾留を許可すると、初回で10日間、延長請求で10日間以内、合計で最大20日間の身柄拘束を受けることになります。
他方、検察官が「勾留に代わる観護措置」を請求することがあります。これは、10日間にわたって少年を少年鑑別所に収容する措置で、勾留と違い延長がありません。
身柄拘束を受けている期間は、少年にとって強い不安を感じる時間であると同時に、学校・職場・家庭・友人といった社会への復帰を難しくしてしまうおそれがあります。
一刻も早い釈放が望ましいので、弁護士による捜査機関や裁判所へのはたらきかけが重要です。
②検察へ送致される
警察での逮捕後は、検察に送致されます。検察官が身柄拘束の必要があると判断した場合には、成人と同様に勾留されることがあります。ただし、少年事件では、勾留状はやむを得ない場合にしか発布できず、勾留に代わる観護措置が行われることもあります。
③裁判所での判断を受ける
原則としてすべての少年事件は家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所では、審判を行うために必要があると認めるときは観護措置をとることができ、その場合には少年は少年鑑別所に収容されます。その後、家庭裁判所で少年審判が行われ、具体的な処遇が決定されます。
少年事件の送致を受けた家庭裁判所では、少年について調査を尽くしたうえで「少年審判」を開くべきかどうかを判断します。
少年審判とは、成人事件における刑事裁判と同じ位置づけにある手続きですが、有罪・無罪や刑罰を決めるのではなく、少年の更生に必要な処分を決める場です。
審判の結果次第では、少年院に収容されたり、保護観察がついて不自由な生活を強いられたりします
④刑事処分のため検察官に戻される「逆送」の可能性も
家庭裁判所が「刑罰を科すのが適当だ」と判断したケースでは、事件が家庭裁判所から検察官へと戻されます。これを「検察官から引き継がれた事件を再び検察官へ戻す」という意味で「逆送」と呼びます。16歳以上の少年が殺人など故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合や、特定少年による一定の重大な犯罪については、原則として逆送がなされ、刑事罰が科されることになります。
(2)少年犯罪での決定の種類と送られる施設
少年審判での処遇には、「保護観察処分」「少年院送致」「児童自立支援施設・児童養護施設送致」の3種類があります。以下では、各処遇に関連する施設について説明します。
①児童相談所
少年を児童福祉機関の指導に委ねるのが相当だと判断されたときは、事件が児童相談所に送致されます。児童相談所は、18歳未満の児童に関する各種相談に応じ、児童福祉施設への入所や里親への委託などを行う都道府県の機関です。
②少年鑑別所
家庭裁判所において観護措置決定がなされた場合には、少年は、少年鑑別所に収容されます。少年鑑別所では、少年審判での処遇を決定するために必要な調査などが行われます。
③少年院
少年審判で少年院送致の決定がなされた場合には、少年は、少年院に収容されます。少年院では、再び非行を行うことがないように反省を深めさせるとともに、規則正しい生活習慣を身につけさせるなど全般的な指導を行う施設です。
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④少年刑務所
家庭裁判所が刑事処分が相当であると判断した場合には、逆送により、成人と同様に刑事裁判にかけられます。刑事裁判で懲役刑や禁錮刑の実刑判決を受けた場合には、少年刑務所に収容されます。
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⑤保護観察所
少年審判で保護観察処分の決定がなされた場合には、保護観察官や保護司の指導を受けながら、社会内での更生を目指します。保護観察所は、保護観察官や保護司が在籍している施設です。
【犯罪・刑事事件】少年事件の流れと、弁護士に依頼するメリット
3. 少年事件で弁護士ができることとは
少年が逮捕により身柄拘束されると、学校や仕事に行けなくなります。不利な処分を回避するためにも早めに弁護士に相談することが大切です。
(1)少年事件における弁護士の役割
少年事件は、成人の刑事事件とは異なり、刑罰ではなく保護処分により少年の更生を図ることを目的としています。
刑事事件であれば、被害者との示談が有利な処分を獲得するために重要ですが、少年事件では、示談以外にも生活環境や家庭環境の整備なども重要です。弁護士は、少年事件の手続きを通して、少年の更生の可能性を訴えることで、有利な処分を獲得できるようサポートできます。
(2)少年事件で弁護士に依頼するメリット
早期に弁護士に依頼することで、身柄拘束をされないように、または身柄拘束をされたとしても早期に解放されるよう活動してもらえます。
また、少年自身や家庭環境の問題点を把握し、少年院送致などの不利な処分を回避できるように交友関係、家庭環境、生活環境の調整をサポートすることもできます。
少年事件は、非常にタイトなスケジュールで手続きが進んでいきます。何もしなければ不利な処分が下されるおそれもありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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