著作権侵害とは?成立要件、ネット上の典型事例、法的手段を解説
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1. 著作権侵害とは
「著作権侵害」とは、他人の著作権を侵害することをいいます。
著作物に依拠して、著作権者の許諾を得なければできない行為を勝手にすると、著作権侵害が成立します。
(1)著作権とは
「著作権」とは、著作物を創作する者(=著作物)に認められる権利で、特許権や商標権などと並ぶ知的財産権の一種です。
「著作物」とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法2条1項1号)。
たとえば、音楽・イラスト・漫画・小説・写真・動画・映画・美術品などが著作物に当たります。
著作者は、さまざまな方法によって著作物を利用する権利を専有しています。したがって、他人の著作物を利用したい場合には、原則として著作権者の許諾を得なければなりません。
(2)著作権の種類
著作権は、以下の種類に細分化されています。
①複製権(著作権法21条)
→著作物を複製する(=コピーを作成する)権利です。
②上演権・演奏権(同法22条)
→著作物を公に上演し、または演奏する権利です。
③公衆送信権・公衆伝達権(同法23条)
→著作物を公衆送信し、または受信装置を用いて公に伝達する権利です。インターネット上へのアップロードなどが対象となります。
④口述権(同法24条)
→言語の著作物を公に口述する権利です。
⑤展示権(同法25条)
→美術の著作物または未発行の写真の著作物を、原作品によって公に展示する権利です。
⑥頒布権(同法26条)
→映画の著作物を、その複製物により頒布する権利です。
⑦譲渡権(同法26条の2)
→著作物(映画の著作物を除く)の原作品または複製物を譲渡して、公衆に提供する権利です。
⑧貸与権(同法26条の3)
→著作物(映画の著作物を除く)の複製物を貸与して、公衆に提供する権利です。
⑨翻訳権・翻案権等(同法27条)
→著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化し、その他翻案する権利です。
(3)著作権侵害の要件
著作権侵害は、以下の要件をすべて満たす場合に成立します。
①著作物であること
創作物の表現について作者の個性が表れている場合(=創作性がある場合)に限り、著作物として認められます。
②著作物に依拠していること
著作物を参照した上で、その著作物を利用したことが必要です。著作物を参照することなく、たまたま似たものを創り出したにすぎない場合は、著作権侵害は成立しません。
③著作権者にしかできない行為をしたこと
前掲の各権利で保護されている利用行為をしたことが必要です。
特に翻案権については、著作権侵害を指摘されている創作物から、オリジナルの著作物の本質的な特徴を直接感得できるかどうかが問題となります。
また、著作物の直接的な利用行為をしていなくても、著作権侵害を助長する行為をした場合には、著作権侵害とみなされることがあります(国内頒布目的による海賊版の輸入、リーチサイトやリーチアプリの提供、コピーガードの不正解除など。著作権法113条)。
2. 著作権侵害が成立しないケース(著作権の制限)
著作物に依拠してその著作物を利用するためには、原則として著作権者の許諾を得る必要があります。
ただし、一定の要件を満たす場合には、例外的に著作権者の許諾を得ることなく著作物を利用できます。
著作権者の許諾が不要となる主なケースは、以下のとおりです。
- 私的使用目的の複製(著作権法30条)
- 付随対象著作物の利用(同法30条の2)
- 検討の過程における利用(同法30条の3)
- 著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用(同法30条の4)
- 図書館等における複製等(同法31条)
- 引用(同法32条)
- 教科用図書・教科用図書代替教材への掲載等(同法33条~33条の3)
- 学校教育番組の放送等(同法34条)
- 学校などの教育機関における複製等(同法35条)
- 試験問題としての複製等(同法36条)
- 視覚障害者等のための複製等(同法37条、37条の2)
- 営利を目的としない上演等(同法38条)
- 時事問題に関する論説の転載等(同法39条)
- 公開の演説等の利用(同法40条)
- 時事の事件の報道のための利用(同法41条)
- 裁判手続等における複製等(同法41条の2)
- 公的機関による複製・利用等(同法42条~43条)
3. ネット上で発生しがちな著作権侵害の具体例
インターネット上で発生しがちな著作権侵害の具体例を紹介します。
(1)漫画・小説・イラスト・動画などを無断転載する
漫画・小説・イラスト・動画などの無断転載は、インターネット上で最もよく見られる著作権侵害のパターンの一つです。
ただし、以下の要件を満たす形で引用する場合は、著作権者の許諾が不要とされています(著作権法32条)。
- 引用する著作物が公表されていること
- 引用の必要性が認められること
- 引用部分とそれ以外の部分が明瞭に区別されていること
- 本文と引用部分が主従の関係にあること
- 引用する著作物を改変しないこと
- 出典を明記すること
(2)映像作品などを無断で編集して公開する
他人の映像作品などを勝手に編集して公開することは、翻案権侵害などに該当します(著作権法27条)。
2023年8月には、映画を10分程度に短く編集した動画(=ファスト映画)を権利者に無断で公開した者に対し、東京地裁が5億円の損害賠償を命ずる判決を言い渡しました。
(3)キャラクター画像をプロフィールのアイコンにする
他人の著作物であるキャラクターの画像を、SNSなどのプロフィールのアイコンにすることは、特段の事情がない限り複製権および公衆送信権の侵害に当たります(著作権法21条、23条)。
アイコンの無断使用は軽い気持ちでやってしまいがちですが、著作権侵害に当たることを正しく認識すべきです。
(4)海賊版サイトから著作物を違法ダウンロードする
違法アップロードされた著作物をダウンロードすることは、著作権侵害に当たります(著作権法30条1項3号、4号)。
音楽・動画・漫画など、あらゆる著作物が違法ダウンロードによる著作権侵害の対象です。
4. 著作権侵害を受けた場合にとり得る法的措置
著作権侵害を受けたことが判明したら、民事上の法的措置を講じるほか、侵害者の刑事告訴も検討しましょう。
(1)民事上の法的措置|差止請求・損害賠償請求・名誉回復措置請求
著作権侵害に対してとり得る民事上の法的措置としては、差止請求・損害賠償請求・名誉回復措置請求が挙げられます。
①差止請求(著作権法112条)
侵害コンテンツの公開差止めや回収などを請求できます。被害の拡大を可及的速やかに防止するため、裁判所に対して著作権侵害行為の差止仮処分を申し立てることも可能です(民事保全法23条2項)。
②損害賠償請求(民法709条)
著作権侵害によって被った損害の賠償を請求できます。損害額については、推定規定が設けられています(著作権法114条)。
ただし、時効期間(=損害および加害者を知った時から3年、民法724条)が経過すると、損害賠償を請求できなくなるので注意が必要です。
③名誉回復措置請求(著作権法115条)
著作者であることを確保し、または訂正その他著作者の名誉・声望を回復するために適当な措置を請求できます。
(2)刑事告訴
著作権法違反に当たる行為は、以下の罰則の対象とされています。
著作権・出版権・著作隣接権の侵害 | 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(著作権法119条1項) ※併科可 ※法人にも両罰規定によって3億円以下の罰金が科されます(同法124条1項1号)。 |
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著作者人格権の侵害 | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(同法119条2項) ※併科可 ※法人にも両罰規定によって500万円以下の罰金が科されます(同法124条1項2号)。 |
加害者の処罰を求めたい場合は、警察署に告訴状を提出しましょう。警察や検察による捜査が促され、加害者の検挙につながることがあります。
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5. 著作権侵害が疑われる場合は弁護士に相談を
自分(自社)の著作権を侵害されているかどうかの判断には、専門的な検討を要します。また、著作権侵害の責任追及に当たっては、証拠の保全や発信者情報開示請求による投稿者の特定などが必要です。
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これらの対応は、弁護士に依頼するとスムーズに行ってもらえます。加害者との示談交渉や訴訟などの対応も一任でき、適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。
インターネットに強い弁護士に相談して、著作権侵害のトラブルを有利に解決しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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