著作権を侵害されたら?民事・刑事の対処法とそれぞれの内容を解説
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1. 著作権侵害とは
著作権侵害とは、他人の著作権を侵害する行為です。著作権侵害を受けた場合には、侵害者に対して差止請求や損害賠償請求などを行うことができます。
(1)著作権侵害の要件
著作権侵害は、以下の要件をすべて満たす場合に成立します。
①著作物であること
著作権は、表現について作者の個性が表れた創作物(=著作物)についてのみ発生します。
②著作物に依拠していること
著作権侵害が成立するのは、著作物を参照した上で、その著作物を利用した場合に限られます。他人の著作物の存在を知らず、たまたま似たものを創り出したにすぎない場合は、著作権侵害は成立しません。
③著作権者にしかできない行為をしたこと
複製権や翻案権(二次創作)など、著作権者が専有する権利によって保護された行為を、無許諾で行った場合に著作権侵害が成立します。
特に翻案(二次創作)については、オリジナルの著作物の本質的な特徴を直接感得できるかどうかにより、著作権侵害に当たるかどうかが判断されます。
また、著作物の直接的な利用行為でなくても、著作権侵害を助長する行為については、著作権侵害とみなされることがあります(著作権法113条)。
ただし、私的使用や引用など、一定の要件を満たす場合には、著作権侵害が成立しないものとされています(同法30条以下)。
著作権侵害とは?成立要件、ネット上の典型事例、法的手段を解説
(2)著作権侵害の身近な具体例
インターネット上では、著作権侵害に当たる行為が横行しています。たとえば、以下のような行為は著作権侵害に当たります。
(例)
- 他人の著作物の無断転載
- 他人の著作物を無断で利用した二次創作
- 海賊版コンテンツのダウンロード
- 国内頒布目的による海賊版の輸入
- リーチサイトやリーチアプリの提供
- コピーガードの不正解除
など
(3)著作権が侵害された場合にとり得る法的手段
自社の著作権を侵害された場合には、以下のような法的手段をとることができます。
<民事上の法的手段>
- 差止請求
- 損害賠償請求
- 名誉回復措置請求
<刑事上の法的手段>
- 刑事告訴
次の項目から、それぞれの法的手段の概要を解説します。
2. 著作権侵害に対する民事上の法的手段と手続き
著作権侵害に対する民事上の法的手段としては、差止請求・損害賠償請求・名誉回復措置請求などが挙げられます。
(1)差止請求
著作権者は、自己の著作権を侵害し、または侵害するおそれがある者に対して、著作権侵害行為の停止または予防を請求することができます(著作権法112条1項)。
また、侵害物件や生産用機械・器具の廃棄など、侵害の停止または予防に必要な措置も併せて請求可能です(同条2項)。
差止請求を行う場合は、裁判所に対して差止仮処分を申し立てましょう(民事保全法23条2項)。仮処分命令は迅速に発令されるため、著作権侵害による損害を最小限に抑えることができます。
(2)損害賠償請求
著作権侵害によって被った損害については、侵害者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。
損害については被害者側が立証責任を負うのが原則ですが、著作権侵害については損害額の推定規定が設けられています(著作権法114条)。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅する点にご注意ください(民法724条)。
- 損害および加害者を知った時から3年
- 不法行為の時から20年
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(3)名誉回復措置請求
著作者は、故意または過失により自らの著作者人格権を侵害した者に対し、著作者であることを確保し、または訂正など名誉を回復するために適当な措置を請求できます(著作権法115条)。
(4)民事上の法的手段を講ずる際の手続き
インターネット上において、自社の著作権が侵害されているのを発見したら、侵害コンテンツが掲載されているサイトの管理者に対して速やかに削除依頼を行いましょう。
サイト管理者が削除に応じない場合は、裁判所に対して削除仮処分を申し立てることも検討すべきです。
侵害者が匿名である場合は、発信者情報開示請求などを通じて侵害者を特定します。
侵害者を特定したら、内容証明郵便で差止請求や損害賠償請求を行う旨の請求書を送付しましょう。内容証明郵便の送付により、損害賠償請求権の時効完成が6か月間猶予されます(民法150条1項)。
内容証明郵便に対する返信があれば、侵害者との間で示談交渉を行います。差止めや損害賠償に関する合意が得られたら、その内容をまとめた示談書を締結しましょう。
示談交渉がまとまらない場合は、訴訟や著作権法に基づくあっせん手続き(著作権法105条以下)を通じて解決を図ります。
3. 著作権侵害に関する刑事責任
著作権侵害は犯罪とされていますが、犯人の訴追には刑事告訴が原則として刑事告訴が必要とされています。
(1)訴追には原則として刑事告訴が必要
著作権法違反の罪の多くは、犯人の訴追に刑事告訴が必要な「親告罪」とされています(海賊版サイトを通じた侵害コンテンツの販売など、一部の例外を除く)。
刑事告訴は書面または口頭で、検察官または司法警察員(巡査部長以上の警察官)に対して行います(刑事訴訟法240条)。実際には、警察署へ告訴状を提出するのが一般的です。
刑事告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行わなければなりません(同法235条)。また、公訴時効期間(後述)が経過する前に行う必要があります。
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(2)著作権・著作者人格権などの侵害に対する罰則と公訴時効期間
著作権・出版権・著作隣接権・著作者人格権を侵害した者は、以下の刑に処されます(著作権法119条1項、2項)。
著作権・出版権・著作隣接権の侵害 | 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金 ※懲役と罰金が併科される場合もあります。 ※法人に対しても、両罰規定によって3億円以下の罰金が科されることがあります(同法124条1項1号)。 |
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著作者人格権の侵害 | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 ※懲役と罰金が併科される場合もあります。 ※法人に対しても、両罰規定によって500万円以下の罰金が科されることがあります(同法124条1項2号)。 |
上記の犯罪によって犯人を訴追できるのは、犯罪行為が終わった時から公訴時効期間が経過するまでです。
公訴時効期間は、著作権・出版権・著作隣接権の侵害については7年、著作者人格権については5年とされています(刑事訴訟法250条2項4号、5号)。
4. 著作権を侵害されたら弁護士に相談を
インターネット上で自社の著作権を侵害されたら、速やかに弁護士へ相談しましょう。
著作権侵害の責任追及を成功させるためには、侵害の事実や損害に関する証拠の確保・保全や、発信者情報開示請求などによる侵害者の特定などが必要です。
ネットに強い弁護士に依頼すれば、これらの対応を適切に行ってもらえます。
また、侵害者との示談交渉や訴訟なども適切に進めてもらえるので、適正妥当な条件での解決が得られる可能性が高まります。
インターネット上における著作権侵害にお悩みの方は、速やかに弁護士へご相談ください。
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