交通事故裁判にかかる期間と費用は? 弁護士相談のメリット・デメリット
- 交通事故
1. 交通事故に遭った場合、裁判を起こすべきか?
裁判(訴訟)は、交通事故の損害賠償を請求するにあたって有力な方法の一つです。
ただし、裁判にはメリットとデメリットの両面があり、常に裁判を起こすべきとは限りません。示談交渉など、裁判以外の方法で解決した方がよいケースもあります。
状況に応じて、裁判を起こすのがよいかどうかを適切に判断しましょう。
(1)裁判を選択するメリット
裁判を選択するメリットは、中立公正である裁判所に、法的な観点から損害賠償責任の有無や金額を判断してもらえる点です。
特に加害者側の対応が不誠実な場合や、不合理に低い金額を提示してくる場合は、裁判が有力な選択肢となります。
(2)裁判を選択するデメリット
裁判を選択するデメリットとしては、時間と費用がかかる点が挙げられます。
裁判には半年から1年以上の長期間を要するケースが多く、裁判を起こす際には裁判所へ一定の費用を納付しなければなりません。弁護士に訴訟代理人を依頼する場合は、さらに費用がかかります。
また、裁判では必ず勝てるとは限りません。加害者側の責任の大部分が否定され、損害賠償をほとんど得られないケースもあります。
早期に損害賠償を受けたい場合や、提示されている額の損害賠償金を確保したい場合は、裁判ではなく示談で解決した方がよいかもしれません。
(3)裁判を選択すべきケース
以下のようなケースでは、示談交渉を打ち切って裁判を起こすことを検討しましょう。
- 自分と相手方の主張内容が大きく異なっている
- 相手方が提示する示談金額が低すぎる
- 過失割合についてもめている
- 相手方の対応が不誠実である
など
2. 交通事故の裁判の流れと費用
交通事故の裁判を起こす場合の手続きの流れと、裁判にかかる費用について解説します。
(1)交通事故の裁判の流れ
交通事故の裁判は、以下の流れで進行します。
①訴訟の提起
裁判所に訴状を提出して裁判を起こします。
②口頭弁論期日
裁判所の法廷において、損害賠償に関する主張・立証を行います。基本的には、期日間で提出された主張書面や証拠の取り調べが中心です。
被害者側としては、事故状況に関する証拠(実況見分調書やドライブレコーダーの映像など)や、損害に関する証拠(領収書、休業損害証明書、後遺障害診断書など)を提出した上で、証拠に基づいて説得的な主張・立証を行うことが求められます。
口頭弁論期日は、審理が熟するまで1か月に1回程度のペースで開催されます。なお、口頭弁論期日の間に、非公開による争点整理の期日が設けられることがあります。
③和解勧告
審理が進行する中で、裁判所が当事者に対して和解を勧告することがあります。和解勧告を受け入れるかどうかは、当事者の自由です。
双方が話し合う意思を示した場合は、非公開の和解期日が設けられ、和解案の調整が行われます。
④尋問
争点および証拠の整理が完了した段階で、口頭弁論期日において当事者や証人から事情を聞く手続き(=尋問)が行われます。尋問は1日で集中的に行われるのが通例です。
⑤和解または判決
当事者が和解に応じた場合には、合意内容を記載した和解調書が作成され、裁判が終了します。和解が成立しないときは、裁判所が判決を言い渡します。
第一審判決に対しては控訴、控訴審判決に対しては上告による不服申し立てが認められています。控訴・上告の手続きを経て、判決が確定します。
(2)交通事故の裁判にかかる費用
交通事故の裁判を起こす際には、主に「訴訟費用」と「弁護士費用」がかかります。
訴訟費用は、裁判所に納付する費用です。
訴状に貼付する収入印紙の購入費用と、書面の送達などに要する郵便切手(数千円分程度)が必要になります。収入印紙の金額は、請求額に応じて決まります。
(出典:裁判所「手数料額早見表」)
弁護士費用は、弁護士に訴訟代理人を依頼する際にかかります。
主な内訳は、依頼時に支払う着手金(請求額の8%程度)と、訴訟が終了した後で結果に応じて支払う報酬金(獲得額の16%程度)です。そのほか、日当や実費などが発生します。
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3. 交通事故の裁判を起こす前に検討すべきこと
交通事故の裁判を起こす前には、より良い解決を目指すために、以下の対応について慎重に検討しましょう。
(1)自賠責保険の被害者請求
交通事故による被害者の損害の一部は、自賠責保険によって補償されます。
自賠責保険の保険金は、被害者自ら保険会社に対して請求することができます(=被害者請求)。被害者請求を行うと、加害者側との間で損害賠償額が確定していなくても、自賠責保険の保険金を前払いしてもらえます。
裁判は長期化が予想されるところ、自賠責保険の保険金を先に受け取れれば、被害者にとって大きな助けとなるでしょう。交通事故の裁判を起こす際には、自賠責保険の被害者請求を行うことをおすすめします。
(2)後遺障害等級認定の申請
交通事故によるけがが完治せずに後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定を申請しましょう。
後遺障害等級の認定を受ければ、加害者側に対して後遺障害慰謝料と逸失利益の損害賠償を請求できます。後遺障害等級認定の結果は裁判でも尊重される傾向にあるので、裁判を起こす前に認定を受けておきましょう。
(3)ADR(裁判外紛争解決手続き)の利用
交通事故の示談交渉がまとまらない場合には、裁判以外にも「ADR(裁判外紛争解決手続き)」を利用する選択肢があります。
ADRは、裁判所以外の第三者機関が行う紛争解決手続きです。裁判よりも迅速かつ柔軟な解決を得やすいメリットがあります。
交通事故ADRの対象となるのは、主に保険会社との示談交渉がまとまらない場合です。保険会社から早期に保険金を受け取りたい場合は、訴訟だけでなくADRの利用も検討しましょう。
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(4)証拠の確保
裁判における主張の当否は、客観的な証拠を中心に判断されます。したがって、適正額の損害賠償を受けるためには、被害者側の主張を十分に立証し得る証拠を提出しなければなりません。
交通事故裁判において特に争点となりやすいのは、過失割合や損害の内容です。
過失割合が争われている場合は、交通事故の状況を示す証拠を提出しましょう(実況見分調書、ドライブレコーダーの映像など)。事故の目撃者がいれば、証言してもらうことも効果的です。
損害については、領収書・休業損害証明書・後遺障害診断書など、被害者が主張する損害に対応する資料の提出が求められます。
裁判を起こしてから十分な証拠をそろえるのは難しいので、弁護士と協力して、事前に有力な証拠を確保しておきましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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