任意整理のメリットとデメリットとは?
- 借金・債務整理
1. 任意整理を利用できる条件
任意整理はどのような条件を満たせば利用できるのでしょうか。以下では、任意整理の概要と任意整理の利用条件について説明します。
(1)任意整理とは|借金を減額できる法的手続き
任意整理とは、債権者との交渉により借金返済の負担を軽減できる方法です。具体的には、以下のような方法で借金返済の負担軽減を図ります。
- 将来利息のカット
- 遅延損害金の減免
- 月々の返済額や返済回数の見直し
- 利息制限法に基づく引き直し計算
毎月返済していても利息の返済ばかりで元金がほとんど減っていかないという方であれば、任意整理により将来利息をカットしてもらうことで、毎月の返済を全額元本の返済に充てることができます。
また、現状の返済額では返済を続けていくことが難しいという方でも、任意整理により月々の返済額を減らすことができれば、経済的な負担を軽減しながら借金の完済を目指すことができます。
(2)任意整理の利用条件
任意整理は、破産や個人再生のような裁判所を利用した債務整理の方法ではないので、法律上、任意整理の利用条件が明確に定められているわけではありません。しかし、任意整理は借金の返済を前提とする債務整理の方法ですので、以下のような条件を満たさなければ、任意整理を利用するのは難しいでしょう。
- 借金総額が比較的少ないこと
- 原則として3~5年以内に完済できる見込みがあること
- 債権者から訴訟提起されていないこと
- ある程度の取引期間や返済実績があること
2. 任意整理のメリットとデメリット
任意整理には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
(1)任意整理のメリット
任意整理のメリットとしては、以下の点が挙げられます。
①毎月の返済負担を軽減できる
任意整理は、以下のような方法で毎月の借金返済の負担を軽減ができます。
- 将来利息のカット
- 遅延損害金の減免
- 月々の返済額や返済回数の見直し
- 利息制限法に基づく引き直し計算
現状の返済額では完済が難しいという方でも、任意整理を行うことで無理なく完済を目指すことが可能になります。
②自宅や車などの財産を手放さなくてもよい
住宅ローンや自動車ローンが残っている債権者を債務整理の対象に含めてしまうと、自宅や車を処分しなければなりません。
しかし、任意整理であれば対象に含める債権者を自由に選択できますので、自宅や車などの財産を手放すことなく借金の整理をすることが可能です。
③裁判所を利用しないため手続きの負担が小さい
自己破産や個人再生は、裁判所への申立てのために書類の収集や作成などをしなければならないため、負担が大きいです。
しかし、任意整理は、裁判所を利用せずに債権者との交渉だけでできますので、手続き上の負担は比較的小さいです。また、法律上決められたルールもありませんので、自由度の高い債務整理の方法といえます。
④職業制限や居住制限がない
自己破産をすると一定の職業に就くことができなくなる場合や、転居や長期間の旅行などが制限される場合があります。
しかし、任意整理にはそのような職業制限や居住制限はありませんので、仕事や日常生活に支障が生じることはありません。
⑤保証人に迷惑をかけないようにできる
保証人付きの債権を債務整理の対象に含めてしまうと、債権者から保証人に対して一括返済が求められるため、保証人に迷惑をかけてしまいます。
しかし、任意整理であれば債務整理の対象に含める債権者を自由に選ぶことができます。そのため、保証人に迷惑をかけることなく手続きを進めることが可能です。
(2)任意整理のデメリット(リスク)
任意整理のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
①ブラックリストに載る
任意整理をしたという事実は、信用情報機関に事故情報として登録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
ブラックリストに載ると以下のような不利益が生じます。
- 新たにクレジットカードが作れない
- 新規のローンの申し込み審査が通らない
- スマートフォンの機種代金を分割払いにすることができない
- 信販系の保証会社を利用する賃貸物件に住むことができない
- 奨学金や借金などの保証人になることができない
②大幅な借金の減額は見込めない
債務整理の方法には、任意整理以外にも自己破産や個人再生がありますが、この中でも任意整理が最も借金減額の効果が小さい方法になります。
裁判所を利用しないため、自由度が高く特定の債権者を除外して債務整理を進めることができるというメリットがある反面、あくまでも交渉による減額方法ですので大幅な減額には債権者が同意してくれません。そのため、大幅な借金の減額が見込めないという点がデメリットとして挙げられます。
③債権者が任意整理に応じてくれないケースがある
自己破産や個人再生は、債権者の同意がなくても手続きを進めることができますが、任意整理は債権者の同意が必要不可欠な要素となります。
債権者によっては任意整理に応じてくれない業者もいますので、そのような債権者が含まれている場合には、任意整理を行うことは困難です。
④将来の経済状況の変化により任意整理が破綻する可能性がある
任意整理は、借金の返済を前提とする債務整理の方法ですので、原則として3~5年間の分割払いを続けていかなければなりません。
長期間の返済計画を立てた場合、その後の失業、病気、転職などで収入が減少してしまうと、当初の予定通り返済を行うことができず、任意整理が破綻してしまうリスクがあります。
3. 任意整理を弁護士に依頼するメリット
任意整理を弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
(1)弁護士と司法書士どちらに依頼するのがいい?
任意整理を依頼できる専門家には、弁護士と司法書士がいます。どちらの専門家に任意整理を依頼するかは、それぞれの専門家ができることを踏まえて判断するとよいでしょう。
①司法書士が任意整理でできること
司法書士が扱うことができるのは、1社ごとの債権額が140万円までの事案に限られます。そのため、1社ごとの債権額が140万円を超えるものが含まれている場合にはそれを除外して任意整理を行わなければなりません。
しかし、借金額が140万円を超えるような債権者は、借金総額の大部分を占める可能性もありますので、そのような債権者を除外してしまうと任意整理の効果は非常に薄いといえるでしょう。
そのため、1社あたり140万円を超えるような債権者がいる場合には、司法書士は不向きといえます。
②弁護士が任意整理でできること
弁護士は、司法書士とは異なり、扱える事件に制限はありませんので、すべての債権者を対象に任意整理を行うことができます。任意整理では、借金総額と可処分所得を踏まえて返済計画を立てる必要がありますが、弁護士であれば適正な返済計画を立てることが可能です。
1社あたりの債権額が140万円を超えている、複数の債権者から高額な借り入れをしているという場合には、弁護士に任意整理を依頼するのがおすすめです。
(2)任意整理を弁護士に依頼するメリット
任意整理を弁護士に依頼すると弁護士費用がかかるというデメリットがありますが、それを上回る以下のようなメリットがあります。
①ほとんどの債権者が交渉に応じてくれる
任意整理を自分で行おうとしても、それに応じてくれる債権者はほとんどいません。
任意整理により借金返済の負担軽減を実現するためには、弁護士のサポートが不可欠です。弁護士が債権者と交渉をすれば、ほとんどの債権者が交渉に応じてくれますので、債権者と条件交渉の話し合いを進めていくことができます。
②不利な条件での和解を避けられる
任意整理の知識や経験がない方だと債権者から提示された和解案が有利な条件であるか、不利な条件であるか判断できず、不利な条件で和解に応じてしまうリスクがあります。
しかし、弁護士であれば任意整理についての豊富な知識と経験がありますので、債権者から提示された条件が適正なものであるかどうかすぐに判断できます。不利な条件であった場合には、債務者の側から適正な条件での示談を求めて交渉していくことも可能です。
③家族にバレにくい
弁護士に任意整理を依頼すると、弁護士が債務者に代わって債権者との交渉の窓口になります。それにより債権者から直接債務者に連絡が行くことはありませんし、書類のやり取りもすべて弁護士宛に送ってもらうことができます。
それにより、借金の存在や任意整理をしていることを家族にバレることなく行うことが可能です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年05月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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