過払い金とは? 仕組みや請求できる条件をわかりやすく解説
- 借金・債務整理
1. 過払い金とは? 過払い金が発生する仕組み
過払い金とはどのようなお金なのでしょうか。以下では、過払い金の概要と過払い金が発生する仕組みについて説明します。
(1)過払い金とは|過去の借金の支払いすぎた利息
過払い金とは、カード会社や貸金業者に対して支払いすぎた利息のことをいいます。
借金には利息が発生しますので、借金の返済をする際には元金と利息の返済を行うことになります。その際に、法律上の上限を超えて払いすぎた利息がある場合には、過払い金として返還を求めることができます。
(2)過払い金が発生する仕組み「グレーゾーン金利」とは
過払い金がなぜ発生するのかは、いわゆる「グレーゾーン金利」を理解する必要があります。
グレーゾーン金利とは、「出資法」と「利息制限法」により規制されている上限金利の間の利率のことをいいます。出資法では、29.2%が上限金利として定められており、これを超えると刑事罰の対象になっていました。他方、利息制限法では貸付金額に応じて15~20%が上限金利として定められていたのです。
利息制限法の上限金利を超えても出資法の上限金利の範囲内であれば刑事罰の対象にはならなかったため、多くのカード会社や貸金業者は、利息制限法と出資法の間のグレーゾーン金利で利息をとっていました。このようなグレーゾーン金利は、違法であるとの最高裁判決をきっかけに、グレーゾーン金利で支払った利息を過払い金として取り戻せるようになりました。
なお、現在は出資法の上限金利は20%に引き下げられたので、グレーゾーン金利は撤廃されています。
2. 過払い金返還請求を行える可能性がある人の条件
以下の条件に該当する人は、過払い金返還請求ができる可能性があります。
(1)2010年6月17日以前に借金の借り入れをしたことがある人
2010年6月17日以前に借り入れをしたことがある人は、過払い金が発生している可能性が高いです。
なぜなら、2010年6月18日に改正貸金業法が施行され、これまでのグレーゾーン金利が撤廃されたからです。もともと、カード会社や貸金業者は、2006年に最高裁が利息制限法を超えるグレーゾーン金利は無効との判決を下したことを受けて、自主的に金利の見直しを行っていましたが、2010年6月18日以降は、利息制限法の範囲内の金利での貸し付けになりますので、過払い金が発生することはありません。
過払い金を請求できるのは、金利の引き下げ時期以前から継続して借り入れをしていた方が対象になります。
(2)借金の完済から10年以内の人
過払い金が発生していたとしても、時効になってしまった部分については取り戻すことはできません。過払い金返還請求の時効は、借金の完済から10年ですので、借金の完済から10年以内という方であれば過払い金を取り戻せる可能性があります。
ただし、一度借金を完済した後、再び借り入れを行った場合には、連続したひとつの取引とみなして過払い金を請求できる可能性もあります。既に10年を経過してしまったという方も、取引経過から過払い金を請求できる可能性がありますので、諦める前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
3. 過払い金返還請求の手続きの流れ
過払い金返還請求は、以下のような流れで手続きを進めていきます。
(1)過払い金返還請求を依頼した場合の手続きの流れ
過払い金返還請求を弁護士や司法書士に依頼した場合の手続きの流れは、以下のようになります。
①任意交渉の場合
任意交渉は、業者との交渉により過払い金を取り戻す手続きです。裁判に比べて回収できる過払い金の金額は少なくなりますが、早期解決が可能ですので、早く過払い金を受け取りたいという方にはおすすめです。
弁護士への相談、依頼
過払い金が発生する条件に該当する場合には、まずは弁護士に相談をします。
弁護士から過払い金返還請求の方針や弁護士費用の説明を受け、納得できたら委任契約を結び、正式に依頼となります。受任通知の送付、取引履歴の開示
依頼を受けた弁護士は、業者に対して受任通知を送付し、取引履歴の開示を請求します。
まだ、借金の完済に至っていない場合でも受任通知が到達すれば、業者への支払いは一時的にストップします。利息制限法に基づく引き直し計算
業者から開示された取引履歴をもとに、利息制限法に基づく引き直し計算を行います。
この引き直し計算により過払い金の有無および正確な過払い金の金額が明らかになります。過払い金返還交渉
過払い金の発生が明らかになったら、業者との交渉により過払い金返還請求を行います。
合意書の取り交わし
業者との交渉の結果、お互いに合意が成立した場合には、合意書の取り交わしを行います。
過払い金の支払い
合意した支払い日までに業者から過払い金の支払いがあれば事件終了となります。
②訴訟による場合
訴訟による過払い金返還請求では、解決まで一定の時間がかかりますが、満足いく金額の支払いを受けられるというメリットがありますので、少しでも多くの過払い金の返還を受けたいという方にはおすすめです。
なお、訴訟による過払い金請求の流れとして、上記の業者との過払い金返還交渉が決裂した後の流れを説明します。
訴訟提起
業者との過払い金返還交渉が決裂した場合には、裁判所に過払い金返還請求訴訟を提起します。
第1回口頭弁論期日
指定された日時に裁判所に出頭し、第1回口頭弁論期日を行います。第1回口頭弁論期日では、原告から提出された訴状の陳述と被告から提出された答弁書の陳述が行われます。
続行期日
裁判の期日は1か月に1回のペースで開催されます。業者からの反論がある場合には、複数回の期日が開催されることもあります。
和解交渉
期日がある程度進むと裁判所から和解案が提示されることがあります。また、裁判期日外でも業者から連絡があり和解案が提示されることもあります。
訴訟上の和解または訴訟外での和解
和解交渉がまとまれば訴訟上の和解または訴訟外での和解により裁判は終了となります。
判決
和解が成立しない場合には、裁判所は、判決により過払い金の返還を命じます。
過払い金の返還
和解および判決に従って過払い金が支払われれば事件終了となります。
(2)過払い金は自分で請求できる?
過払い金の返還請求は、弁護士に依頼せずに自分だけで行うことも可能です。自分で行えば、弁護士に依頼する費用を節約できるというメリットがあります。
しかし、弁護士に依頼せずに自分だけで過払い金請求をすると、メリットを上回る以下のようなデメリットが生じますので、過払い金請求は弁護士に依頼するのがおすすめです。
①面倒な引き直し計算をしなければならない
過払い金の有無および金額は、取引履歴をもとに引き直し計算をしなければわかりません。取引期間が長期に及ぶと引き直し計算も非常に手間がかかりますので、不慣れな方では、正確に計算することができず、誤った金額を請求してしまうリスクがあります。
②過払い金を大幅に減額される
自分で過払い金を請求すると弁護士が対応した場合に比べて、大幅に過払い金を減額される可能性があります。個人での対応では弁護士と同水準の過払い金の返還を受けることは困難ですので、少しでも多くの過払い金を受け取りたいという場合には、弁護士に依頼する必要があります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年05月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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