特定調停とは? メリット・デメリットと手続きの流れを解説
- 借金・債務整理
1. 特定調停とは
「特定調停」とは、調停委員が仲介を行い、債権者と債務者の和解成立を支援する裁判手続きです。
任意整理・個人再生・自己破産と並んで、借金などの負担を軽減する債務整理手続きの一種に位置づけられます。
(1)特定調停と任意整理の違い
特定調停は、債権者と債務者の合意に基づいて債務負担を軽減する点で、任意整理に類似しています。
元本のカットは認められにくく、利息と遅延損害金のカットが中心となる点も、特定調停と任意整理で共通です。
その一方で、任意整理と特定調停には下表のような違いがあります。
特定調停 | 任意整理 | |
費用 | 1社当たり 500円(収入印紙)+郵便切手数百円分 ※弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が必要 |
数万円~数十万円程度 ※弁護士に依頼する場合 |
債権者からの取立てが止まる時期 | 債権者が申立書を受領した時 ※裁判所が債権者に対して送達する |
債権者が弁護士の受任通知を受領した時 ※弁護士に依頼する場合 |
過払い金返還請求 | 不可 | 可 |
強制執行の可否 | 可 ※調停調書を債務名義として、強制執行を申し立てることができる |
不可 ※別途債務名義の取得が必要 |
弁護士による代理 | あまり行われない(本人が対応するのが一般的) | 一般的に行われている |
(2)特定調停の利用条件
特定調停を利用できるのは、おおむね以下の条件を満たす方です。
①金銭債務を負っていること
借金やクレジットカードの利用料金など、幅広い金銭債務が特定調停の対象となります。
②支払不能のおそれ等
以下のいずれかに該当することが必要です。
- 支払不能に陥るおそれがある
- 事業の継続に支障をきたすことなく、弁済期にある債務を弁済することが困難である
- 債務超過に陥るおそれがある(法人のみ)
③減額後の債務を完済できる見込みがあること
安定した継続的収入があることや、減額後の債務を3年程度で完済できることなどが求められます(債権者との交渉によります)。
2. 特定調停のメリット・デメリット
特定調停には、メリット・デメリットの両面があります。
特に、弁護士のサポートを受けられない場合にはデメリットが大きく、任意整理・個人再生・自己破産など別の債務整理手続きを選択した方がよいかもしれません。
どの債務整理手続きを選択すべきかについては、弁護士などの専門家にアドバイスを求めましょう。
(1)特定調停のメリット
特定調停の主なメリットは、以下の2点です。
①費用が安く済む
債権者1社当たり1000円以内の費用で済むため、安価に債務負担を軽減できる可能性があります。
②調停委員に話し合いを仲介してもらえる
中立的な立場にある調停委員に話し合いを仲介してもらえるため、弁護士がいなくても債務整理を行うことができます。
債権者と直接話し合う必要もないため、ストレスを軽減できる点もメリットです。
(2)特定調停のデメリット
その一方で、特定調停には以下のデメリットがあります。
①取り立てが止まるまで時間がかかる
特定調停では、裁判所の債権者に対する申立書の送達をもって取り立てが止まります。
弁護士への依頼直後に受任通知が発送されて取り立てが止まる任意整理に比べると、特定調停において取り立てが止まる時期は遅れるケースが多いです。
②過払い金の返還を受けられない
任意整理とは異なり、特定調停の手続きの中では、過払い金の返還を受けることができません。別途過払い金返還請求を行う場合は、二度手間になってしまいます。
③調停が成立しないことがある
債権者が債務の減額に同意しなければ、特定調停は成立しません。
特定調停では弁護士によるサポートがない分、不成立となるリスクは任意整理よりも高いと考えられます。
3. 特定調停の手続きの流れと必要書類
特定調停の手続きの流れと、申し立て時の必要書類について解説します。
(1)特定調停の手続きの流れ
特定調停の手続きは、以下の流れで進行します。
①簡易裁判所に対する申し立て
債権者の住所・居所・営業所・事業所のいずれかを管轄する簡易裁判所に対して、必要書類を提出して特定調停を申し立てます。
②裁判所の債権者に対する書類の提出依頼
特定調停の申し立てを受けた簡易裁判所は、債権者に対して金銭消費貸借契約書の写しや引き直し計算書などの提出を依頼します。
③事情聴取期日(調査期日)
裁判所によって選任された調停委員が、債務者から資産・収入・返済状況や返済方法に関する意向などを聴き取り、その情報を基に返済計画案を作成します。
④調整期日
原則として債権者・債務者の双方が出席し、返済計画案の内容を調整します。
⑤調停成立・不成立・17条決定
債権者と債務者が返済計画案に合意すれば調停成立、合意の見込みがなければ調停不成立となります。
ただし、調停不成立となった場合において、裁判所が相当と認めるときは、調停委員の意見を聴いて職権で調停条項を定めることができます(=17条決定)。
17条決定に対して、当事者は決定の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができます。異議申し立てがなされた場合、17条決定は失効します。
(2)特定調停の申し立ての必要書類
特定調停の申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。申立書や調査表の様式は、簡易裁判所の窓口で交付を受けられます。
- 申立書とその写し1部
- 調査表
- 家計収支表(1か月分)
- 所得額証明書および納税証明書(家計を同一とする者に関するものを含む)
- 給与証明書または源泉徴収票(家計を同一とする者に関するものを含む。取得困難な場合は、直近2,3か月分の給与明細書の写し)
- 毎月の家賃が明らかになる書類(賃貸借契約書や家賃の振込書の写しなど)
- 毎月の光熱水道料の金額が明らかになる書類(最近2,3か月分の光熱水道料の領収証や預金通帳の写しなど)
- 相手方(債権者)の資格証明書
- その他、裁判所が必要と判断する書類
- こちらに掲載されている情報は、2024年05月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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