債務整理とは? 種類と手続きの方法、日常生活への影響を解説
- (更新:2024年12月27日)
- 借金・債務整理
1. 債務整理とは
「債務整理」とは、借金などの債務の負担を軽減するための手続きです。
(1)債務整理の目的
債務整理の目的は、借金などの債務の支払いが困難になった方を救済することです。債務の減額・免除や支払いスケジュールの変更などを通じて、債務負担の軽減を図ります。
その一方で、債権者の利益にも配慮しなければなりません。そのため債務整理を行う際には、債権者の同意を得ることや、法的手続きを通じて債権者平等を確保することなどが求められます。
(2)債務整理の対象となるもの・ならないもの
すべての債務が債務整理の対象となるわけではありません。債務の種類によっては、債務整理ができない場合があります。
債務整理の対象となるもの
- 金融機関や貸金業者からの借金
- 家族や知人からの借金
- クレジットカードの利用料金
- 携帯電話の利用料金
- 未払いの家賃
- 奨学金の返済債務
など
債務整理の対象とならないもの
- 税金
- 国民年金保険料、国民健康保険料、社会保険料
- 罰金クレジットカードの利用料金
など
2. 債務整理の種類|特徴や手続きの方法などを解説
債務整理には、主に以下の種類があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
(1)任意整理
任意整理は、債権者との交渉を通じて、債務の減額や支払いスケジュールの変更について取り決める手続きです。
裁判所を通さずに簡単な手続きで行える点、費用が安く済む点、財産が処分されない点、対象債務を債務者が選べる点などが任意整理のメリットです。
弁護士に依頼した場合の任意整理の流れは以下の通りです。ケースによりますが、和解が成立するまで平均で3~6か月程度かかります。
- 弁護士に依頼
- 弁護士が受任通知を貸金業者に送る
- 貸金業者に受任通知が届いた時点から直接の取り立て禁止(貸金業規制法第21条9項)
- 弁護士が貸金業者に返済計画の交渉を行う
- 貸金業者が合意すれば、返済計画に基づいて3~5年かけて返済する
弁護士に任意整理を依頼すると、上記の通り直接の連絡や取り立てが法律で禁止されるのが非常に大きなメリットのひとつです。
その一方で、債権者の同意が必須である点や、元本の減額が認められにくい点などは、任意整理のデメリットといえます。
債務総額や債権者数が比較的少なく、安定した収入のある方は、任意整理が有力な選択肢となるでしょう。
(2)個人再生
個人再生は、原則として債権者全員との間で、債務の減額や支払いスケジュールの変更を行う裁判手続きです。
個人再生では、任意整理よりも大幅に債務を減額できることがあるほか、一部の債権者が反対していても、債権者の多数決による債務の減額が可能です。
担保権付きの財産は原則として処分されますが、自宅の土地・建物については処分を回避できる制度が設けられています。
個人再生では、裁判所に申し立てて、開始が決定すれば返済計画を提出する必要があります。返済計画が認められれば、借金を最大で10分の1に減額し、原則3年~最長5年で返済していくことになります。個人再生にかかる期間は、ケース・バイ・ケースですが、一般には1年以上かかることが多いでしょう。
個人再生を弁護士に依頼した際の流れは、以下の通りです。
- 弁護士が裁判所に個人再生を申し立て
- 個人再生手続開始決定
- 再生計画案の提出
- 再生計画案の認可・不認可の決定
- 再生計画案に基づき返済
また、個人再生のメリットのひとつとして、一定の条件を満たせば、住宅資金特別条項を利用して住宅ローンの残っている自宅を維持することが挙げられます。
住宅資金特別条項を利用できる主な条件は、以下の通りです。
- 居住するために自宅を所有していること
- 住宅ローン以外の担保権(抵当権など)が設定されていないこと
- マンション管理費や税金の滞納などをしていないこと
- 保証会社の代位弁済がされていない、または代位弁済の日から6か月以内であること
他にも細かい利用条件が設けられており、手続きも複雑であるため、個人再生は弁護士などの専門家に依頼する方が賢明でしょう。
その一方で、個人再生は継続的に安定した収入を見込める方でなければ利用できません。また、債務総額が100万円以下の場合は、個人再生による減額は一切認められません。
債務が多額であって債権者の数も多い方や、自宅の処分を回避したい方などは、個人再生を検討すべきでしょう。
(3)自己破産
自己破産は、財産の処分と引き換えに、原則として債務全額が免除される裁判手続きです。
債務の全額免除が認められるのは自己破産のみであり、借金問題の最も抜本的な解決に繋がる手続きといえます。
自己破産も、裁判所に申し立てて行う手続きです。裁判所に自己破産を申し立て、免責許可が下りると、原則としてすべての借金から解放されて再スタートを切ることが可能となります。
個人再生とは異なり、自己破産の場合は自宅を手放すことになります。ただし家具・家電など最低限の生活必需品や99万円以下の現金、祭祀財産などの“自由財産”は手元に残すことが認められています。
自己破産を弁護士に依頼した際の流れは、以下の通りです。
- 弁護士が裁判所に自己破産・免責許可の申し立て
- 裁判官による審尋
- 免責許可決定
任意整理・個人再生は“返済の見込みがあること”が利用条件でしたが、自己破産の場合は“支払不能”であることが条件となっています。支払不能とはすでに支払期日が過ぎている借金を返済する資力・能力がなく、今後も継続的な支払いが見込めない状態を意味しています。実際に支払不能であるかどうかは、財産の有無、毎月の収入、扶養家族の人数、配偶者の収入などを鑑みて総合的に判断されます。
自己破産を申し立てても、裁判官に免責許可をもらえなければ借金は消えません。本来返済しなければならない借金を国家権力で強制的に無くしてもらう手続きですから、財産や収入については偽りなく申告しましょう。
借金がなくなるという大きなメリットがある代わりに、
- 氏名が官報に掲載される
- 警備員や公認会計士などの特定の資格職に一定期間就けなくなる
などのデメリットもありますので注意しましょう。
一定の財産を除き、債務者の財産は処分されてしまう点にも注意が必要です。また、税金や社会保険料などの債務については免責が認められません。
安定した収入がない方、収入に比べて借金が多すぎる方、ほとんど財産を持っていない方などは、自己破産が適している可能性が高いです。
(4)特定調停
特定調停は、調停委員の仲介によって債権者と債務者が交渉し、債務の減額や支払いスケジュールの変更などを取り決める裁判手続きです。
特定調停では任意整理と同様に、個々の債権者との交渉を通じて債務負担の軽減方法を合意します。
他方で、任意整理は債権者と債務者の直接交渉によりますが、特定調停は調停委員が仲介を行います。
実務上は、特定調停はあまり利用されていません。手続きがシンプルな任意整理の方が、よく選択される傾向にあります。
3. 債務整理による日常生活への影響
債務整理をすると、多かれ少なかれ、日常生活に何らかの影響が生じます。
どのような影響が生じるのかは手続きの種類によって異なるほか、誤解されがちな部分もあるので、弁護士のアドバイスを受けましょう。
債務整理による日常生活への影響に関して、以下の各事項につき解説します。
- ローンやクレジットカードなどが利用できなくなる
- 家や車などの財産が処分されることもある
- 家族の財産は処分されない
- 債務整理の事実は戸籍に記載されない
- 職場などに知られることはほとんどない
(1)ローンやクレジットカードなどが利用できなくなる
債務整理をすると、個人信用情報機関のデータベースに事故情報が登録されます(いわゆるブラックリスト入り)。
その結果、5年から7年程度は新たにローンを組むことができなくなる、クレジットカードが強制解約されるなどのデメリットが生じる点に注意が必要です。
(2)家や車などの財産が処分されることもある
自己破産の場合、家や車などの高額財産は処分されます。
個人再生の場合は、家については残せる制度がありますが、ローンが残った車などは処分されてしまいます。
重要な財産の処分を回避したい場合には、任意整理などを検討しましょう。
(3)家族の財産は処分されない
自己破産や個人再生を申し立てても、債務者以外の財産は処分されません。したがって、家族の財産などは処分されずに済みます。
ただし、債務者が家族と財産を共有している場合には、共有持分が処分の対象となり、結果的に家族の財産にも影響が生じ得るので注意が必要です。
(4)債務整理の事実は戸籍に記載されない
債務整理をしても、その事実が戸籍に記載されることはありません。
結婚や相続などをきっかけに、婚約者や家族などに戸籍を見られる機会があっても、その際に債務整理の事実を知られることはないのでご安心ください。
(5)職場などに知られることはほとんどない
債務整理をした事実が、職場などに通知されることは原則としてありません。したがって、債務整理が仕事に影響することは、基本的にありません。
ただし、債務者が会社から借金をしている場合には、その借金も自己破産や個人再生の対象となり、破産管財人から会社に連絡が行く可能性があるのでご注意ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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