自己破産すると車や家はどうなる? 手元に残せるケースを解説

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自己破産すると車や家はどうなる? 手元に残せるケースを解説

自己破産をすると、車や家は原則として処分されてしまいます。
しかし、債務者の状況や債務整理の方法によっては、車や家の処分を回避できることもあります。弁護士のアドバイスを受けながら、適切な債務整理の進め方を検討しましょう。

1. 自己破産をすると車や家はどうなる?

自己破産は、破産者の財産の処分と引き換えに、原則として債務全額を免除する手続きです。
裁判所による破産手続開始の決定時点において破産者が所有していた財産は、生活に必要な最低限のものを除き、破産手続きを通じて処分されます。

破産手続きによって処分されない財産(=自由財産)は、以下のとおりです(破産法第34条第3項、第4項)。

①99万円以下の現金

②差押禁止財産

  • 生活必需品(衣服、寝具、台所用具、畳、建具など)
  • 1か月間の生活に必要な食料、燃料
  • 事業のために不可欠な財産
  • 礼拝または祭祀に欠くことができないもの(仏像、位牌など)
  • 系譜、日記、商業帳簿
  • 勲章
  • 学校などでの学習に必要な書類、器具
  • 未公表の発明、著作
  • 義手、義足
  • 公的年金の請求権
  • 給与債権の4分の3(手取りが月44万円を超える場合は、33万円以下の部分のみ)
  • 生活保護費

など

③拡張された自由財産

※破産者の生活の状況、財産の種類および額、ならびに破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、裁判所が審査・決定します。

自由財産に当たらない財産は、破産手続きを通じて処分されてしまいます。
車や持ち家は、原則として自由財産に当たらないので、破産手続きを通じて処分されるのが原則です。

裁判所によって自由財産の拡張が認められれば処分を回避できますが、特に持ち家については、自由財産として認めてもらうのは難しいでしょう。
他方で車については、ローンの状況や市場価値などによっては自由財産と認められ、処分を回避できることがあります。

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2. 自己破産で車の処分を回避できるかどうかの判断基準

自己破産の手続きにおいて車が処分されるかどうかは、おおむね以下の2点を中心に判断します。

  1. 自動車ローンの有無
  2. 車の市場価値|おおむね20万円がボーダーライン

(1)自動車ローンの有無

自動車ローンが残っている場合、ローン債権を担保するための所有権留保(担保権)が車に設定された状態です。

所有権留保は、破産手続きにおける「別除権」に当たります。
別除権は破産手続きによらず行使できるとされており(破産法第65条第1項)、債権者によって別除権が行使されれば、担保物は引き揚げられてしまいます。

したがって、自動車ローンが残っている場合には、債権者によって車が引き揚げられてしまうので、破産申立て後の処分を回避することはできません。

なお、車の所有権留保は、自動車ローンを完済すれば外すことができます。
ただし、自己破産を申し立てる前に弁済期未到来の自動車ローンを返済すると、破産管財人による否認の対象になり得るので注意が必要です(破産法第162条)。

(2)車の市場価値|おおむね20万円がボーダーライン

自動車ローンが残っておらず、担保権が設定されていない自動車については、原則として破産手続きによる処分の対象となります。
ただし例外的に、裁判所の判断によって自由財産への組み入れ(=自由財産の拡張)が認められれば、車の処分を回避できます。

車について自由財産の拡張を認めるかどうかは、破産者の生活の状況、財産の種類および額、破産者が収入を得る見込みなどを、裁判所が総合的に考慮して判断します。
そのため一概には言えませんが、車の市場価値が20万円以下であれば、自由財産の拡張を認める運用をしている裁判所が多いです。

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3. 自己破産を申し立てる前に、車を売却してもよいのか?

破産申立てをすれば車は処分されてしまうのだから、その前に車を売却しておこうと考える方がいらっしゃいます。

しかし、自己破産前の車の売却は、破産管財人による否認(破産法第160条)や詐欺破産罪(破産法第265条)による処罰の対象になり得るので注意が必要です。
特に、車の価値がローン残高を20万円以上上回っている場合には、自己破産前に売却すると否認や詐欺破産罪のリスクがありますので、弁護士のアドバイスを受けましょう。

4. 自己破産で家の処分を回避したい場合はどうする?

自己破産をすると、家は処分されるのが原則です。どうしても家の処分を回避したい場合には、事前に弁護士へ相談して対策を検討しましょう。

(1)自己破産でどうしても家を残したい場合の対処法

自己破産を申し立てつつ、家の処分を回避するためには、以下の方法が考えられます。

①自由財産の拡張を申し立てる

家の土地・建物についても、市場価格がきわめて低い場合には、裁判所によって自由財産の拡張が認められることがあります。
ただし都市部など、一般に不動産の価値が高い地域の土地・建物については、自由財産の拡張は認められにくいでしょう。

②適正価格で家を売却し、リースバックを受ける

市場価格に近い価格で家を売却し、買主から改めてその家を借りれば、破産管財人による否認を回避しつつ、家に住み続けることができます。
ただし、売却価格が適正であることについてのエビデンス(鑑定評価書など)が求められるほか、売却代金を使い込まずにとっておかなければなりません。

(2)家を他人名義に移せば住み続けられるのか?

自己破産を申し立てる前に、家を他人名義に移せば、破産手続きによる処分の対象外となります。

しかしこの場合、破産管財人による否認(破産法第160条)や詐欺破産罪(破産法第265条)による処罰の対象になり得るので注意が必要です。
これらのリスクを回避するためには、適正価格で売却した上で、売却代金を使わずにとっておくなどの対応が必要になりますので、弁護士にご相談ください。

(3)家の処分を回避したいときは、任意整理や個人再生を検討すべき

自己破産の手続きの中で家の処分を回避するのは、多くの場合難しいと思われます。

どうしても家の処分を回避したいときは、任意整理や個人再生を検討しましょう。

①任意整理

債権者と個別に交渉し、債務負担の軽減方法について合意します。財産が処分されることはありません。

②個人再生

原則として債権者全員との間で、債務の減額や支払いスケジュールの変更などを取り決めます。
ローンが残っていなければ、家は処分されません。ローンが残っている場合でも、特例的に家の処分を回避できる制度が設けられています。

弁護士に相談すれば、最適な債務整理の方法についてアドバイスを受けられます。借金の返済に苦しんでいる方は、お早めに弁護士へご相談ください。

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