離婚したいと思ったら。離婚する前に準備すべきこと
- 離婚・男女問題
1. 離婚の準備を始める前に
離婚に向けた準備や手続きを始める前に、本当に離婚すべきかどうかをよく検討すべきです。衝動的に離婚してしまうと、後悔する可能性があるのでご注意ください。
(1)そもそも離婚をすべき?
配偶者と離婚すべきかどうかは、以下の観点から総合的に検討するのがよいでしょう。
①精神面・健康状態
配偶者と一緒にいることが原因でご自身の心が大きなダメージを受けている場合は、離婚した方がよいことが多いです。うつ病などの精神疾患を患っている場合は、なおさら離婚を急ぐべきでしょう。
②経済状況
ご自身の収入や資産だけで生活できるめどが立つのであれば、離婚に向けた障害は少なくなります。家族の援助を期待できる場合にも、離婚を後押しする要素となるでしょう。
反対に、配偶者の収入なしでは生活が成り立たない場合は、離婚を決断する前に、十分な収入を得られる仕事を探すなどの準備が必要です。
③子どもの状況
配偶者が子どもの育児にほとんど関与していない場合は、離婚しても子どもに与える影響は少ないと考えられます。ただし、離婚によって転校が必要になりそうな場合は、子どもの意向も確認した方がよいでしょう。
一方、配偶者が子どもの育児を積極的に行っている場合は、子どもが大きなショックを受ける可能性があるので、離婚の判断は慎重に行うことをおすすめします。
(2)衝動的に離婚してはいけない理由
配偶者と衝動的に離婚してしまうと、夫婦関係を元に戻すことはできません。話し合えば円満な家庭を回復できたかもしれないのに、その機会を失ってしまうのは悲しいことです。
また、将来を見据えた検討を行わないと、離婚の話し合いが長引いたり、不利な条件で離婚してしまったりするリスクが高くなります。スムーズかつ適切な条件で離婚を成立させるためには、事前準備が非常に重要です。
2. 離婚する前に準備すべきこと
配偶者と離婚する前には、以下の観点から十分な準備を整えましょう。
①離婚理由の整理
②生活面での自立の準備
③離婚条件の確認
(1)離婚理由の整理
まずは、どのような理由で離婚したいのかを整理しましょう。夫婦が話し合って離婚に合意すれば、理由を問わず離婚できます。
これに対して、配偶者が離婚を拒否する場合には、最終的に離婚訴訟を提起して、法定離婚事由が存在することを立証しなければなりません(民法第770条第1項)。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 高度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
離婚訴訟に発展する可能性に備えて、法定離婚事由に関する証拠を集めておきましょう。有力な証拠があれば、離婚請求が認められやすくなることに加えて、配偶者に慰謝料を請求する際にも役立ちます。
(2)生活面での自立の準備
離婚後の生活を見据えて、ご自身の経済力だけで自立できるめどを立てておきましょう。
離婚後の生活資本を確保する手段としては、以下の例が挙げられます。あらゆる手段を尽くして、離婚後の生活費や住居を確保しましょう。
①ご自身の収入
収入が不足している場合は、新たな仕事を探しましょう。
②実家の援助
資金・住居の両面から、実家に援助をお願いできないか相談してみましょう。
③公的な援助金
離婚によってひとり親となる場合は、以下の公的な援助金を利用できる可能性があります。
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- ひとり親家庭住宅手当
- ひとり親家庭等医療費助成制度
- 自治体独自の援助金
など
(3)離婚条件の確認
離婚にあたっては、金銭や子どもに関する離婚条件を取り決める必要があります。
主に以下の事項につき、どのような離婚条件を希望するかを考えておきましょう。法的な相場観を知りたい場合は、弁護士のアドバイスをお求めください。
①お金のこと
(a)慰謝料
不貞行為・DV・モラハラなど、配偶者が離婚の原因を作った場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料の金額相場や請求方法などを把握しておきましょう。
(b)財産分与
夫婦のいずれかが婚姻中に取得した財産は、財産分与の対象となります。配偶者の資産や収入の状況を把握しておきましょう。
(c)年金分割
婚姻期間中に配偶者が厚生年金保険に加入していた場合は、加入記録の分割を請求できることがあります。特に配偶者が会社員や公務員で、ご自身が専業主婦の方は、年金分割を忘れずに請求しましょう。
②子どものこと
(a)親権
親権争いが生じた場合、家庭裁判所は子どもの利益を第一に考えて、どちらを親権者とするかを決定します。子どもと一緒に過ごした時間の長さ・経済状況・子どもの意思などが重点的に考慮されますので、親権が欲しい場合はこれらのポイントにご留意ください。
(b)養育費
子どもが経済的に自立するまでの期間、親権者でない側は親権者に対して養育費を支払う義務を負います。
養育費の大まかな金額が知りたい方は、弁護士JPの養育費計算ツールをご利用ください。
(c)面会交流
子どもの情操教育の観点から、親権者でない側の親も、子どもと定期的に交流することが望ましいと考えられます。離婚後の面会交流の方法について、頻度・場所・連絡方法などのルールを決めておきましょう。
3. 離婚の切り出し方とタイミング
スムーズに離婚を成立させるためには、離婚の切り出し方とタイミングについても注意すべきです。
(1)離婚の切り出し方
離婚を切り出す際には、感情的にならず、冷静に離婚を希望する旨を伝えましょう。離婚条件についても、ご自身の希望を根拠に基づいて主張することが大切です。
相手を非難せず冷静に話し合う姿勢を見せれば、配偶者も離婚を受け入れる可能性が高まります。
(2)離婚を切り出すタイミング
離婚を切り出すタイミングとしては、以下の時期を目安とするのがよいでしょう。
①離婚する意思が明確になったとき
離婚手続きの途中で迷いが生じないように、ご自身の中で離婚の意思が揺るがないと感じた時点で離婚を切り出しましょう。
②法定離婚事由の証拠がそろったとき
不貞行為など法定離婚事由の証拠がそろっていれば、相手に拒否されても、離婚訴訟を通じて離婚を成立させることができます。
③経済的な自立のめどが立ったとき
離婚後の生活に不安がなくなれば、迷いなく離婚手続きを進められます。
④子どもが経済的に自立したとき
養育費などが争点から外れるため、離婚協議がまとまりやすくなります。
もっとも、ご自身がDVを受けている、子どもが配偶者から虐待されているなどの事情があれば、準備が整わなくても速やかに逃げ出し、早急に離婚成立を目指しましょう。
離婚の切り出し方とタイミングについては、以下のコラムもご参照ください。
4. 離婚前に別居できる?
(1)離婚前に別居することもできる
夫婦には法律上、同居義務がありますが、夫婦関係が悪化していたり、配偶者に非があったりするような場合にまで、同居の義務を課すものではありません。
そのため離婚する前に、別居することはできます。
ただし、理由もなく勝手に別居をはじめて、相手に生活費を渡さないなどといった行動は、民法上の法定離婚理由、「悪意の遺棄」にあたります。この場合、相手からの離婚請求や慰謝料請求に応じなければならない可能性があるので、注意が必要です。
(2)離婚前に別居が必須なわけでもない
別居しなければ離婚できないということはありません。話し合いや離婚調停で合意できれば同居中であっても離婚することができます。
もっとも、話し合いや調停で合意できずに裁判になったときには、民法第770条で定められている「法定離婚事由」がなければ離婚が認められません。
不貞など同条第1号から第4号に挙げられている事由がある場合には別居していなくても離婚が認められますが、そのような事由がない場合には、別居をある程度の期間継続することで同条5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると認められなければ離婚できません。
すなわち、不貞等の事由がない場合には、別居をしなければ離婚できないことがあるということです。そのため、性格の不一致などを理由に離婚したいが、配偶者が離婚に反対しているという場合には、別居をある程度の期間継続して離婚を成立させるという流れになります。
(3)別居中は婚姻費用を請求できる
別居を検討している方にとって、別居中の生活費などは大きな心配事でしょう。しかし、ご自身が配偶者より収入の少ない場合には、別居中であったとしても他方に生活費(婚姻費用)を請求できる権利があります。
これは、夫婦には、結婚生活で生じるお金について、お互いに負担しなければならない義務(婚姻費用分担義務)があるためです。
婚姻費用分担義務は、離婚するまで継続します。そのため別居期間中も離婚が成立するまでは、婚姻費用を請求できるのです。
ただし婚姻費用によって、生活費のすべてを十分にまかなえるとは限りません。婚姻費用については裁判所の公表する算定表が基準となることが一般的ですので、算定表を参考に金額を把握して、公的な扶助なども調査したうえで、別居後の生活設計をされるとよいでしょう。
(4)別居の準備とポイントは?
①別居条件を相手と話し合う
別居に際しては、できる限り、配偶者と別居条件を話し合うことが望ましいです。別居条件としては、請求する婚姻費用の金額や子どもとの面会交流の内容などを決めておくと、別居後の生活がスムーズにスタートできるでしょう。
もっとも配偶者からモラハラやDV(家庭内暴力)を受けているような場合には、離れることを優先すべきです。ご不安な方は別居前から弁護士にご相談されるとよいでしょう。
②別居先の家を探す
別居するのであれば、実家に戻る、新たに賃貸物件を探すなど、別居先となる住居を探さなければなりません。
家を借りる場合には、敷金礼金用のまとまったお金を準備し、配偶者や親戚、保証会社などに保証人をお願いすることも必要です。
③子どもの養育環境を準備する
子どもを連れて別居するのであれば、別居先の地域の学区を調べたり、習い事はどうするのかを決める必要があります。
また、別居後に仕事をする場合には、入園できる保育園があるのか、学校の放課後に利用できる学童保育はあるのかなども調べて、手続きできるよう準備することが大切です。
④生活に必要な物をそろえる
別居に向けて、新たに必要になる生活必需品をそろえます。自宅からどのようなものを持ち出せるのかも考えておくとよいでしょう。
⑤離婚に備えた準備をしておく
離婚を念頭においた別居であれば、別居する前に、離婚時に有利になる証拠を収集しておいたり、夫婦の共有財産を明らかにしておいたりするのがよいです。
もし相手に不貞行為などがあれば、同居しているときの方が証拠を収集できる可能性が高くなります。不貞行為など法定離婚原因にあたる事実を示す証拠があれば、裁判となった場合に離婚事由として認められるだけでなく、慰謝料を請求できる可能性があります。
また離婚時には、夫婦が結婚生活で築いた財産を清算して分配する「財産分与」を行うので、共有の財産がどれくらいあるかを把握しておくことも大切になります。
なお共有財産とは、夫婦が同居期間中に協力して築いた財産です。そのため別居後に得た収入は、基本的に財産分与の対象にはなりません。
また、離婚を検討しているのであれば、別居準備と並行して、離婚について早期に弁護士に相談することもおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年01月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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